マネジャーをバックアップする
さまざまな仕掛け

「1on1はやらざるをない」

 そういう空気をつくった後は、1on1を継続させ、技術を高めるためのバックアップのさまざまな仕掛けをスタートさせました。

 まず、主に応答技法を学ぶための研修を実施しました。応答技法は「技術」なので、正しく学べば誰でもできるようになります。

 5人一組で行うシャドーコーチングというものも始めました。これは5人一組で行うもので、一人が上司役、もう一人が部下役を務め、上司と部下それぞれの後ろにシャドーがつきます。シャドーは上司役、部下役それぞれの話し方、聞き方を観察する役割です。残りの一人は、上記4人を俯瞰した位置から、どんな発言のやり取りが行われるか、特に言葉に注視して観察するオブザーバーを務めます。

 コーチングの終了後、上司役と部下役は、それぞれのシャドーとオブザーバーからフィードバックを受け、次回以降に活かします。

 さらに、社内コーチの養成も同時に行いました。社内コーチは、いわば1on1のエバンジェリスト(伝道師)あり、1on1のやり方に迷った人にとっての相談役です。

 また、人事部門の同志でもあります。人事がどれだけ1on1が重要だと言っても、限界があります。社内コーチは、人事の意図と現場の感覚がわかるので、現場に適した方法で、1on1の浸透を図ってくれるのです。

 社内コーチ候補生は、前述したコーチング研修を受けるほか、全員が社外のプロフェッショナルについて、より専門的にコーチングを学びます。また、毎週、2人一組でのピアコーチングを行い、対話のクオリティを高めます。このようなやり方で養成され、認定された社内コーチは、現在100人近くにまでなっています。

 このような、さまざまなバックアップ施策も奏功したのでしょう。1on1のスタートから5年経ち、社内調査では社員の9割が、少なくとも隔週で1回以上の1on1を実施しています。

(ヤフー上級執行役員 本間浩輔)