政権交代という政治のダイナミズムを活用すべき

 憲法の定めるところによると、わが国の第1院(衆議院)は、まず首相指名と予算の議決について優位権を持つ。首相指名について優位権を持つということは、とりもなおさず衆議院選挙が首相すなわち政権を選択する選挙であるということである。

 戦後のわが国では、長い間自民党の一党独裁政治が続き、戦後のごく短い混乱期を除いては、第1党の交代による本格的な政権交代は2009年の民主党・鳩山内閣が初めてであった。もっとも、鳩山内閣、およびそれに続いた菅内閣の余りの不甲斐なさに、政権交代に期待した市民の希望は、目一杯ふくらんだ風船が瞬時にしぼむように雲散霧消してしまった感が強い。しかし、政権交代が本来的に有している政治のダイナミズムを決して軽視してはならない。

 政権交代というシステムに内在する政治の緊張感をたった1回の体験で捨て去るには余りにも忍びないではないか。

 このように考えれば、衆議院選挙は明確に政権選択選挙と位置付け、むしろ政権交代をもっと容易にするため全議席を小選挙区で選ぶことが望ましい。なお、他の先進国と比較すると、わが国の議員定数は決して多すぎる訳ではない。衆議院の定数は少し減らすとしても350~400人程度が妥当だと考える。

 ちなみに政権交代を促すための小選挙区制は民主党の本来的な主張に沿うものであり、また自民党も一刻も早い政権復帰を狙っているのであるから、両党ともこうした改革には反対のはずがないと考えるがどうか。

 なお付言すれば、政治に新しい血を導入しやすくする観点から、時限立法でもいいので、2世及びそれに準ずる親族の同一選挙区からの立候補を禁止する法案を伴わせて制定してはどうか。首相経験者は立候補できないという条項をこの中に入れてもいい。

 また、人口比に見合ったレベルで、女性や若い世代の力を政治の場に反映させるためのインセンティブプランの1つとして、政党交付金を活用してはどうだろうか。たとえば全立候補者の中に占める女性や若い世代(40才未満等)の割合が40%を超えないと、政党交付金を満額支給しない等の方策が考えられる。

第2院に要求されているのはチェック機能ではないか

 第2院の歴史的な変遷や諸外国の実例を見ると、アメリカ合衆(州)国のような連邦制の国家を別にすれば、第2院の本来的な機能は、第1院をチェックすることにあると思われる。そうであれば、わが国の第2院である参議院は可能な限り、市民の多様な意見を反映できるような構成にすることが望ましい。すなわち、参議院選挙は全国区一区の政党名のみによる比例代表制がふさわしいと考える。定数は200人程度が妥当であろう。