中国の著名外交官登用に見る苛烈な「反腐敗闘争」の実情

中国内政・外交を観察する上で
インパクト大の人事ニュース

 5月5日、歴史上の“五四運動”が発端となり制定された「五四青年節」(筆者注:言うなれば若者の社会における役割を喚起し、行動を鼓舞する記念日)が過ぎた頃、私から見て、中国内政・外交を観察する上でインパクトのあるニュースが飛び込んできた。

 《劉建超已于2017年4月担任浙江省共産党委員会常務委員、規律委員会書記》――。

 劉建超氏と言えば、まず思いつくのが外交官という職責であろう。今でも覚えている。私が北京大学国際関係学院で学部生をしていた2006年頃だっただろうか。当時中国外交部報道官を歴任していた劉氏が同学院を訪れ、関貴海同学院副院長司会の下、我々学生に講演を行った。当時、我々はちょうど関先生が担当する《鄧小平理論》という学部内の必修科目を受講していた。

「仮に劉氏が学者の道へと進んでいたなら、ここには貴方が座っていたにちがいない」

「仮に関先生が外交官になっていたなら、現在と同じように卓越した業績を残したに違いない」

 学生たちを前に胡麻をすり合う大人の光景がやけに印象的だったのを覚えている。

 その後、劉氏は中国駐フィリピン大使、駐インドネシア大使(2009~2013年)、外交部部長代理(2013~2015年)を歴任した後、外交部を離れ、国家予防腐敗局副局長(専属、副部長級)に就任、と同時に、中央規律検査委員会国際協力局局長、中央反腐敗協調小組国際追逃追贓工作弁公室(筆者注:党中央直属の反腐敗を目的としたワーキンググループで、汚職・腐敗などに端を発する罪を犯した後海外へ逃亡した公職者を連れ戻す、およびそれによって海外に逃げた資金を取り戻す工作を担当するオフィス)責任者を兼任するようになった。