米議会では与野党間で政府債務残高の上限をめぐり、激しい論争が続いている。米国の経済指標にスローダウンの兆候が出てきたため、欧米のマスメディアや市場関係者の中から、「FRBはQE3(量的緩和策第3弾)を検討すべきだ」という声が出始めている。大規模な財政刺激策を今後実施することは困難だからだ。

 しかし、QE3に期待を寄せる声には、誤解と過大な期待が含まれている。QE3が必要になるということは、QE2が経済成長に効かなかったということでもある。

 FRB幹部は、国債大規模買い入れ策の効果とは、FRBが市場から買った国債を持ち続ける“ストック効果”にあると主張してきた。その観点でいうと、QE2は、今年6月末に終わるわけではない。購入された国債の残高は維持されるからだ。それでも米国経済が息切れするのだとしたら、QE3を導入しても効果はあるのか? という疑問がわいてくる。

 QE2でFRBが供給した資金の行き先を見ると、同政策とはじつはイリュージョンだったことがわかる。QE2で供給された資金のほとんどはニューヨーク連銀に開設された(米国における)外国銀行の口座で退蔵されている。彼らは、同連銀から0.25%の利息を得るためにそれを行っている。