中国 2017年5月8日

中国で大人気だった日本人俳優、小松拓也が
反日デモで仕事を失っても中国にこだわる理由

2006年に中国に移住し、蘇州、北京、広州、その後上海に約8年在住。情報誌の編集長を経て現在はフリーランスとして活躍する大橋さん。今回は、上海を拠点に活動していたタレントの小松拓也さんが日本に拠点を移し、日中をテーマとした舞台を実現させるまでの苦悩と、日中友好への思いをレポートします。

 上海で情報誌の編集をしていた頃は、政治家に経営者、作家、文化人、アーティスト、タレントなど、いろいろな方にお会いする機会があり、その度に刺激を受けてきた。小松拓也さんもそんなひとりだ。

中国の人気TV番組への出演で一躍有名に

 上海を拠点に芸能活動を行なっていた小松さんは、2007年に「加油! 好男児(今風に訳すと「頑張れ! イケメン」といったところだろうか)」という人気オーディション番組に出演したことで人気に火が付いた。高視聴率番組だったことから、若い女性を中心に多くの中国人から知られるようになる。

 2010年に開催された上海万博では開幕式に出演。日本人では、谷村新司さんと小松さんだけという快挙だった。ドラマやイベントを中心に活躍し、順風満帆な芸能生活を送っていた小松さんだったが、ある出来事を契機に一変する。12年の日本政府による尖閣諸島国有化だ。

 中国で反日デモが激化した時、小松さんは、ドラマ『金田一少年の事件簿』の撮影で香港に滞在していた。上海では激しいデモが行なわれなかったため、撮影後に戻っても、テレビやネットで見るような悲惨な光景はなく、いつもと変わらぬ日常があるように見えた。予定されていた仕事がいくつかキャンセルになったが、その時点では、長期化するとは思いもよらなかった。

 ところがその直後にドラマの撮影で日本に一時帰国すると、小松さんはその温度差に驚いた。メディアは一様に中国政府や中国人を激しく批判していた。

 「破壊行為にかかわっていたのはほんの一部の中国人なのに、日本の報道を見ていると、ほとんどすべての中国人が行なっているような印象を受けました。中国人にだって、素晴らしい人はたくさんいるのに」

 小松さんが会う中国人は皆冷静だったし、日本人のことを心配してくれる人も少なくなかった。この経験から、個人と個人がつながっていくことが重要だと小松さんは強調する。

 中国人との友情を再確認する一方で、仕事面ではなかなか事態が好転しなかった。主演を務める予定になっていた中国映画への出演が見送られるなど、進行中のプロジェクトが相次いで中止に追い込まれた。

 テレビに日本人が出演することも許されなくなった。テレビ局による自主規制ということだったが、中国のテレビ局は政府の管理下に置かれているため、政府が指示していたと見るほうが自然だ。

 当時、中国では小松さんのように活動している日本人タレントが何人かいたが、一斉にテレビから姿を消した。以前は引っ張りだこだったイベントも、日本人が出演するというだけで許可が下りなくなったし、日系企業のあいだには、イベントの開催そのものを自粛する動きが広がった。活動の場を失い、小松さんも当初帰国を考えたが、まずは中国にとどまることにこだわった。

 「日本と中国で活動することで、両国の少しでも多くの人たちから受け入れられ、文化交流につながっていけばと思ってやってきました。それこそが、僕の最大のモチベーションです」

 しかし、“日本人禁止令”が長引くと、理想だけを掲げているわけにはいかなくなった。各所に売り込みに行っても、「日本人だから」という理由だけで門前払いされ、自分の力だけではどうにもできない無力さを痛感させられる。いったいいつになったら元の生活に戻れるのか。前に進みたくても進めない、先の見えない毎日に、小松さんは次第に精神的に追い込まれていく。そして13年3月、小松さんは拠点を日本に移す決意をする。

2015年10月から11月にかけて上海で行なわれた「Team Moshimoshi?」旗揚げ公演【小松拓也さん提供】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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