同年9月5日午後0時13分頃には「スカッドER(射程延伸型)」とみられる弾道ミサイル3発が発射され、9分後の同22分頃北海道奥尻島沖約200キロの排他的経済水域内に落下した。この際海上保安庁が防衛省や内閣官房の危機管理センターからの情報により、船舶に航行警報を出したのは0時31分で、落下の9分後だった。

 今年3月6日午前7時34分頃には、北朝鮮は「スカッドER」らしいミサイル4発を同時に発射、秋田沖と能登半島沖の排他的経済水域内に落下、北朝鮮は「在日米軍基地攻撃訓練だった」と翌日発表した。この際にも船舶に対する注意喚起が出されたのは発射から13分後の7時47分で、またも落下の後だった。

 海上保安庁は危機管理センターなどから来た情報を直ちに船舶に伝えるから、航行警報が出たのがミサイルの落下より後だったことは、もしJアラートで市町村などに警報を出すとしても、サイレンが鳴るのはミサイル落下後になることを示している。

どこに向かうかすぐには分からず
警報出しても、間に合わず

 度重なる秋田、北海道方面への弾道ミサイル発射に対して、これまでJアラートの警報が出されない理由について、内閣官房の危機管理担当官は「Jアラートのミサイル発射情報は、弾道ミサイルが日本に飛来する可能性があると判断した場合に出す。領海外に落下すると判断すれば警報は出さない」と言う。

 だが、弾道ミサイルは発射後しばらく、ほぼ垂直に上昇し、その後、徐々に向きを変える。ミサイルが「スカッドER」か「ノドン」か、「ムスダン」かによって射程は大きく異なるが、それもすぐには分からないから、日本の方向に飛ぶミサイルが日本海に落ちるか、陸上の目標に向かうかは発射を知ってから、さらに後でないと判断できない。内閣官房のJアラートについての資料ではまず「ミサイル発射情報」を出し、「その後日本の領土、領海に落下する可能性があると判断した場合には続報として屋内避難を呼びかける」と述べている。これまでほとんどJアラートが使われていないのは「日本に落下しない」と判断したからではなく、落下地点を予測してから警報を出しても間に合わないのが実態だろう。

 政府(内閣官房と消防庁)は4月21日に都道府県の危機管理担当者約70名を招集し、市町村でも住民避難訓練を早期に行うよう要請した。

 その際2016年2月の北朝鮮の「人工衛星打ち上げと称するミサイル発射」の際には「発射後4分で警報が出た」ことが強調された。

 だがこれは事前に北朝鮮から通告があり、待ち構えていた場合の話で、実戦とは程遠い状況だったことを忘れてはならない。