北朝鮮の人工衛星打ち上げを「人工衛星打ち上げと称するミサイル発射」と防衛省が言い続け、メディアもよく分からずにそれを繰り返すから、ミサイル発射は4分程で分かると思い込むのだろう。だが、2012年と2016年の「テポドン2」の発射で北朝鮮は重さ200キログラム程の小型人工衛星を周回軌道に乗せることに2回成功した。これは、米国戦略軍統合宇宙運用センターが認めている。

 ただ人工衛星は2回とも故障し、電波が出ていないことを理由に防衛省はなお「人工衛星としての機能はない」と主張する。だが「テポドン2」が高度約500キロで水平に加速して衛星を放出、それが地球を南北方向に周回していることは事実で、放物線を描いて飛ぶ弾道ミサイルとは全く異なる軌跡だ。

「テポドン2」は全長30メートル、重量90トンもの大型で、海に面して丸見えの高さ67メートルもの巨大な固定発射機の側で2週間程かけて組み立て、液体燃料を注入して発射する。こんな物は航空機などの先制攻撃で簡単に壊されるから軍用ミサイルには全く不適で、日本の人工衛星用のH2Aなどと似た性格のロケットだ。

 これに対して軍用の弾道ミサイルは自走発射機に乗せて移動したり、潜水艦内に立てて積めるようにしたりするために、極力小型にし、発射準備時間を短くしようとする。例えば「ムスダン」(射程3000キロ以上)は全長12.5メートル、重さ12トン、10分で発射可能とされる。

「弾道ミサイルも人工衛星用ロケットも基本的には同じ」と言う人が多いが、それは1950年代に、ICBM(大陸間弾道弾)と人工衛星が誕生した当時の話だ。その後の60年間で、弾道ミサイルと、人工衛星用ロケットは別々の方向に進化した。それを知らないこの説は「旅客機も爆撃機も基本的技術は同一」と言うような粗雑な論だ。テレビで人工衛星打ち上げの画像をながめて、「ミサイル発射とはこんな物」とのイメージを抱くのはまちがいの元だ。

「2016年のテポドン2発射の際にはその4分後に警報が出た」と政府が言うのは事前通告があったことを言わない点で誇大広告じみており、対ミサイル防衛に関し「イージス艦のSM3ミサイルはハワイ沖の実験で4隻が1発ずつ発射し、3回命中したから75%の命中率だ」との宣伝と類似する。

 ハワイのカウアイ島沖でのイージス艦の実験では、標的となる模擬弾道ミサイルの性能、発射地点、落下する海面、発射時間などのデータが分かっていて、それを入力して待ち構えるのだから当たらない方が不思議な位だ。野球の練習で「センターフライ、行くぞ」と叫んで取らせる「シートノック」同然だ。実戦ではありえない最良の条件の下での成績を基準に防衛戦略や住民避難を考えるのは児戯に類する。

湾岸戦争でも
ミサイル警報、空振りに

 1991年の湾岸戦争中、私はサウジアラビアの首都リヤドに居てイラクによる弾道ミサイル「アル・フセイン」(スカッド改)の攻撃を体験した。イラクは88発を発射、うちリヤドには13発が落下した。

 ミサイル発射の際に出る大量の赤外線(熱)を、赤道上空約3万6000キロの高度で周回する米国の「早期警戒衛星」が感知すると、米本土の北米航空宇宙防衛司令部をへて情報が現地の米軍に伝わり、リヤドの市街でサイレンが響き、ホテルの火災報知ベルが鳴った。