“モノ”ではない記念日の贈り物<br />“体験ギフト”で市場に新風吹き込む<br />ソウエクスペリエンス社長 西村 琢ソウエクスペリエンス社長 西村 琢
Photo by Toshiaki Usami

今年も6月19日に「父の日」がやって来る。東京都千代田区のとある大手百貨店では、父の日ギフトとして大々的に販売する商品の選定に勤しんでいた。

 といってもラインナップは代わり映えすることなく、主力は昨年同様、定番のポロシャツやネクタイ、飲食物といった“モノ”ばかり。売り場の景色もこれといって新鮮味はない。

 そんな折、こうしたモノばかりの売り場に新風が吹き込む。“体験ギフト”である。

 商品カタログをプレゼントし、そのなかから好きな商品を選んでもらうなら、どこにでもある。だがカタログの中身がモノではなく、心が踊るような“体験”がズラリと並んでいるのだ。

 たとえばゴルフレッスン。ゴルフ好きの人なら誰しも一度はスコアの伸び悩みに直面したことがあるだろう。とはいえスクールでレッスンを受けるのは大げさだし、ましてや手続きが面倒といったイメージもあり、手を出しにくい側面がある。

 だがこのカタログならレッスンの希望日時を伝えるだけ。そもそも、どのスクールが高評価なところか調べる必要もないから、手軽に受講が可能だ。

 このほか、パラグライダーといったアクティブな体験から、酸素カプセルなどのリラックス体験まで、すべて一つのカタログにパッケージされている。あとは父親に好きなものを選んでもらえばいいわけだ。

 このギフト、百貨店のほかウェブ上でも購入が可能で、7月からはコンビニでも発売される予定だ。通常は5250円、1万0500円などと値段に応じたカタログが販売されており、結婚式の2次会用賞品としても人気だ。

「いつかやってみたい」とは思いながらも、前段階で時間や価格などさまざまな制約にぶつかり断念する人が多い。「手軽に選ぶだけで、おもしろい体験を身近なものに」──。この体験ギフトを提供するソウエクスペリエンスは、そんな思いを胸に西村琢が2005年に創業した。

ベンチャー大会優勝でも破格の待遇と
出資を断り起業を選んだ“こだわり”

 西村は起業を考えるようになった大学3年生のとき、松下電器産業(現パナソニック)が主催する、起業家を発掘して資金を提供する大会に応募。500人のなかから見事優勝し、3000万円程度の出資を受ける権利を獲得したのである。