[東京 11日 ロイター] - 東京電力ホールディングス <9501.T>と原子力損害賠償・廃炉等支援機構は11日、新しい再建計画を政府に申請し、内容を公表した。福島第1原発事故で東電が担う資金を確保するために、今後10年以内に送配電や原子力事業の他電力との再編・統合を目指すと明記した。

また、収益改善の鍵を握る原発再稼働については2019年度以降に柏崎刈羽原発が再稼働するのを前提にした6通りの収支計画を示した。同再建計画の改定は2014年1月以来で「第3次計画」という位置づけになる。ただ、再編、再稼働とも現状は厳しい見通しで、新計画の実現性の面で多くの不確定要素を抱えている。

<収支計画は原発再稼働が前提>

新再建計画では26年度までの収支計画を示した。原子力規制委員会による審査中の柏崎刈羽6、7号機が19年度、20年度、21年度までにそれぞれ再稼働することが前提だ。

19年度と20年度に再稼働した場合、その後、4基か7基が順次動くケースと、21年度に再稼働し4基か6基が動く場合の収支を示した。

19年度に再稼働し全7基が動く場合は24年度から26年度までに2400億円前後の経常利益を想定する。21年度に再稼働し4基稼働した場合、25年度で約2500億円の経常利益を確保するとしている。

記者会見した東電の広瀬直己社長は原発再稼働について「このまま柏崎刈羽7基が廃炉になることはないと思っている。安全を保った上で地元の理解を得ることが大事だ」などと述べた。

<企業価値向上で「再編」必須に>

昨年末、経済産業省が取りまとめた「東電改革提言」では、福島第1原発事故に伴う賠償、廃炉、除染の費用が従来想定から倍増の約22兆円に上るとの試算を示した。このうち、東電が負担する金額は約16兆円とされた。

16兆円の内訳は、廃炉に8兆円、賠償で4兆円、除染で4兆円。このうち廃炉と賠償に係る分は東電が毎年の収益で約5000億円を確保し、除染にかかる4兆円は、政府が原賠支援機構を通じて東電に注入した1兆円の公的資本を将来的な東電株の売却を通じて捻出しようというものだ。

この売却益を確保するには東電の「企業価値向上」が不可欠になる。再建計画では、廃炉と賠償に係る5000億円の費用の確保のほかに、16年度に1300億円だった純利益を4500億円程度に引き上げる必要があるとした(訂正)。

原発再稼働を前提とした26年度までの収支計画と比較して、純利益のレベルを概ね2倍以上に引き上げる必要がある。

そのために、新計画では海外事業を通じた収益拡大、送配電や原子力分野で「共同事業体」を設立、再編・統合を通じた収益力強化が必要と明記した。

東電の会見に先立って計画内容を説明した原賠支援機構の幹部は、「共同事業体設立には潜在的パートナーの理解を得ていくことが大事。多様な提案を受け付けること、分野ごとに着実に進める」などと説明した。

とはいえ、数十年間の長期にわたり、ばく大な資金負担を強いられる東電との再編に踏み出すことに、電力会社側の警戒感は極めて強い。1、2年といった比較的短期に東電との再編で前向き姿勢に転じる電力会社が出現する公算は小さそうだ。

柏崎刈羽原発の地元新潟県の米山隆一知事は、昨年10月の就任以降、再稼働に厳しい姿勢を崩していない。再編、再稼働がそれぞれ実現しなければ、新計画が「絵に描いた餅」に終わる可能性も否定できない。

<国有化は継続>

合わせて原賠支援機構は、現行の再建計画で2016年度末に実施する予定だった東電の経営評価の内容を公表した。

それによると、燃料・火力事業での中部電力<9502.T>との提携や6年半ぶりの公募社債市場への復帰などを評価した。

一方で、福島第1原発事故でのメルトダウン隠しや柏崎刈羽での免震重要棟の耐震性に関する対応の不備といった原子力安全の徹底などで「進捗が十分でなかった」と指摘。機構を通じた国の議決権比率2分の1超を継続するとの結論を示した。

*本文段落目の「16年度に純利益で4500億円程度を確保する必要があるとした」を「16年度に1300億円だった純利益を4500億円程度に引き上げる必要があるとした」に訂正します。

(浜田健太郎 編集:田巻一彦)