バタワースから対岸のペナン島まで、長い橋で繋がれている。

 遠来の客をもてなすため、チュアはリゾート地として有名なペナン島のバトゥフェリンギにあるゴールデンサンズ・リゾートホテルに部屋を取っておいてくれた。

 海辺の建物は、その曲線的なプロポーションで滞在客を優しく出迎え、ビーチと椰子の木陰は人間界の煩悩をひと時忘れさせてくれることを約束している。

 ホテルの海鮮バーベキュービュッフェで夕食を済ませると、チュアは「明日までに返事が出来るかどうか判りませんが、とにかく持ち主である家具メーカーの社長に連絡を取ってみます」そう言って早めに退散していった。

 今日の交渉に塞がった気持ちとなっていた幸一は、重い足取りで部屋へ引き揚げようとしたが、隆嗣がそれを引き留めて、「一杯やろう」と誘った。

 ビーチに沿って配されているプールの方へと歩いて行った。

 アンダマン海からマラッカ海峡へと続く水平線の中へ溺れていく夕陽の断末魔の叫びのような紅い照射を撥ね返していた海面も、今は黒く塗りつぶされて、囁くように聞こえてくるさざ波の音と潮の香りだけが自己主張している。

 プールサイドに設けられた籐椅子に揃って腰掛けた二人は、近づいてきたボーイに水割りを注文した。

「こんなところで男二人というのも、却って寂しいもんだな」

 隆嗣の軽口にも、幸一は黙ったままだった。

「君には不満だったようだね」

 昼間の交渉で一方的に断を下した隆嗣の態度に心中穏やかでなかった幸一が、堰を切ったように思いを口にする。