「ギャンブル依存症である可能性が面談などの中で判明したら、何らかの働きかけはしますが、個人のプライベートに踏み込んで『パチンコは止めるように』という指導は、現在は行っていません。市民の方から『生活保護なのにパチンコ』という通報を受けたら、現在の方針をお話しし、ご理解いただくようにしています」(別府市・査察指導員)

 とはいえ、市民のすべてが納得するとは限らない。通報している市民は、生活保護で暮らす人々のパチンコを「公費でギャンブルをしている」と感じており、善意に基いて行動しているのである。しかし、保護費の使途は自由だし、パチンコが「人間がすべきではないこと」というわけでもない。生活保護だからといって、ケースワーカーが受給者の娯楽を制限してよい理由はない。

 それでも、生活保護とパチンコに関する感じ方・認識・立場の違いは、時間をかけて少しずつ埋めていけば、いつか埋められるかもしれない。援助のスタンスに立つ生活保護ケースワーカーが、ジレンマを感じる場面は他にも数多く存在する。

「自立」の「助長」とは?
永遠の課題に向き合うケースワーカー

別府市福祉事務所は市役所庁内にあり、生活保護(ひと・くらし支援課)・高齢者福祉・障害福祉・育児支援・福祉政策がまとめられている。この配置は、福祉事務所に行くことに対する抵抗感を、少し減らしているかもしれない

 生活保護の目的は、最低限度だが健康で文化的な生活を保障すると同時に、自立を助長することである。この「自立」の「助長」とは何なのだろうか。

 生活保護制度を創った厚生官僚(当時)・小山進次郎氏は、「就労して生活保護が不要になること=自立」という安易な理解を当初から戒めていた。1950年に成立した生活保護法新法の下、「自立とは何なのか」という議論や試行錯誤は深められていくはずであった。

 しかし施行早々、増大する生活保護費を問題視する大蔵省(当時)と厚生省の“バトル”が開始された。わずか4年後の1954年、「適正化」の名の下に、厚生省は生活保護の利用抑制に取り組み始め、現在に至っている。

 同時に「自立」の意味や内容を深めて拡大する努力も続けられているのだが、「適正化」への強い流れの中で、「自立の助長」は「就労」「生活保護を使わない」という狭い意味の中に押し込められてしまいがちだ。

 このことは、生活保護の様々なジレンマを生み出し続けている。生活保護ケースワーカーとして生活保護の現場で働き続けてきた別府市の査察指導員も、このジレンマの中で悩んでいる。