「生活保護制度を使わないと、生存の危うい方がおられるわけです。生活保護の利用を厳格化すると、そういう方は福祉事務所に来られなくなるのではないかと怖れています。ただ単純に厳しくすればいいんだろうか、『北風』『太陽』のバランスが大切なのではないかという、個人的な思いがあります」(別府市・査察指導員)

 あるとき、福祉事務所のカウンターの前を行ったり来たりしている来庁者がおり、職員が「どうされたんですか?」と声をかけると涙ぐんだそうだ。すぐに相談室で対応が開始されたのだが、一般市民はコンビニやスーパーマーケットに行くように市役所や福祉事務所に行けるわけではない。

引け目を感じなくていい
当たり前の生活をすればいい

 ともあれ、生活保護開始となったら、ケースワーカーによる支援が始まる。

「できることは、その場その場で『引け目を感じる必要はありません、当たり前の生活をしていいんです』と安心していただくことくらいだと思っています」(別府市・査察指導員)

 働ける年齢層で障害・傷病がないのなら、自信と就労意欲を高め、就労につなぐことが目標となる。別府市では現在、3名の就労指導員がきめ細かな就労指導を行える体制となっている。それは、「地域のブランド力を高め、低賃金ではない仕事が数多くあり、市民の所得を高め、生活保護を必要とせずに生きていけることが多い社会をつくる」という市の戦略ともリンクしている。とはいえ、いきなりのフルタイム就労はハードルが高すぎる。

「就労は1日3時間程度から、様子を見ながら、無理はされないように心がけています。もちろん、就労が続けられないこともありますが、ケースワークでは責めないことが大事です。『また合う仕事がきっとありますから』とお話ししています。その方の就労意欲を削ぐようなことは、してはならないと思っています」(別府市・査察指導員)

 生存を支えるためには、資源が必要だ。その人がその人らしくあるためには、その人の使える現金が必要だ。しかし、現金支給が自尊心を損なっているかのように見える場面も、ないわけではない。制度に対してジレンマを感じたり悩んだりしながらも、丁寧に日々の仕事に向き合う。

「いざ何かあったら、誰もが使う制度なんですから。生活保護で暮らす方々も私たちも、同じ人間です。その点では、現状の生活保護制度を維持することが、やはり望ましいのではないかと思っています」(別府市・査察指導員)