疑問を感じながらの調査とペナルティ
生活保護バッシング報道への懸念

 しかし別府市には、2015年までの25年間にわたり、パチンコ店・競輪場に生活保護の人々が出入りしていないかどうかを調査しており、生活保護費の減額というペナルティも行なってきた事実がある。「今とこれからが良ければ、過去はどうでもいい」というわけには行かないだろう。話を聞いた査察指導員は、パチンコ等調査の業務にも従事していたのだが、一連の報道と国・県の指導で「ギャンブルについての市民感覚と生活保護制度の乖離があることを意識しました」という。

 同様の調査は、1990年代には全国各地で行われていたようである。生活保護とパチンコに関して、日本全国で行われていた調査や処分の全容は不明だが、特に厚生省(当時)が指導したというわけではなく、生活保護ケースワーカーが自らの業務を見直す中で、自然発生して広まったようだ。流行りの言葉で言えば「忖度」されたのかもしれない。その後、多くの地域では行われなくなったようだが、いつどのように行われなくなったのかは不明だ。

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 ともあれ、別府市の「生活保護とパチンコ問題」に関し、メディアには支持する立場から激しく批判する立場まで、多様な報道と意見が見られた。私自身は、最も激しく批判した1人であろうと自覚している。そういう私に、査察指導員は穏やかな表情で「色々な考え方があっていいと思います。仕事で行っている私たちは、受け止めるしかないです」と答える。しかし、バッシング報道となると話は別だ。

「生活保護バッシング報道が保護を受けている方に影響し、気持ちが鬱屈したり、『保護は受けたくない』という状況になったりすることは、怖いと思います」(別府市・査察指導員)

 誰もが容易に自分の意見を発信できるこの時代、すべての人に「このコメントが、このツイートが、誰かを決定的に打ちのめすかもしれない」という想像力と良識が必要であるはずだ。生活保護とパチンコという用語の組み合わせは、そんな想像力や良識を簡単に吹き飛ばすけれども、私の関心を別府市に向けさせて現地を訪れさせたのは、その爆風だった。

 これからも、別府市の人々とその暮らし、とりわけ低所得層の暮らしと幸福感と生活保護の今後に、関心を向け続けたい。

(フリーランス・ライター みわよしこ)