たとえば、2.では、特区的手法の活用がうたわれているが、ここで、1つの骨太の極論を提示すると、「実質的には香港のような1国2制度に近い形で、向こう10年間を限度とする広域特区を被災地域に設置し、特区の統治については3県の知事に全権を委ねる」といったところまで大胆に踏み込んで書くべきではないだろうか。

 東北地方のGDPはわが国全体の5%余りを占めている。逆に考えれば、残り95%がしっかりしていれば、将来の道州制等を見据えて思い切った実験(1国2制度)を行うことに躊躇する理由はどこにも見当たらない。しかも今回の東日本大震災からの復興は「白地に絵を描ける」数少ないチャンスでもある。

夢物語に近いかもしれないが
実効性がある可能性は高い

 よく考えてみれば、地方の自立のモデルケースにする基礎的条件がすべて整っているではないか。そうであれば、戦後半世紀にわたってわが国の繁栄を実現してきたレガシーシステム(1940年体制)を、いったん、すべてご破算にして、3県の知事に、極論すれば、外交・防衛、それに警察、裁判等国家の骨組みを構成する枠組を除く全権を時限立法で付与して、被災地域の自立的な復興を促すやり方をあえて試してみる価値は十分にあるのではないだろうか。

 もちろん、特区内の徴税権も原則として3知事に付与する。基本法である民法・商法や刑法はそのまま据え置くとしても、憲法に反しない範囲において、その他のさまざまな法律・諸規制の存続・改廃もすべて3知事に委ねる。3知事の互選で、大統領的な役割を担うトップを選出し、議会は3県の合同議会で当面の任に当たるものとする。復興の主体は5.にあるように市町村でいいと思うが、復興の土俵(制度的枠組)を決めるのは特区を司る知事の方がふさわしい。

 このような1国2制度が仮に実現したとしても、10年の時限立法であるので、国家の一体性を損ねる恐れも少なく、また3県の独立性を損ねる心配も同様に少ないものと思われる。また、憲法第95条において求められる住民投票を被災地で行うことは困難という意見もあるだろうが、その場合は、例えば「道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律(平成18年法律第106号)」のように地方公共団体を具体的に定めない形式とすることも技術的には十分可能であると思われる。