ウォーターゲート事件の再来!?
トランプ降ろしが始まる可能性も

 米国では、今回のFBI長官解任を「ウォーターゲート事件」と比較する報道が見られる。

 「ウォーターゲート事件」を簡単に振り返ってみよう。時の大統領は、共和党のニクソンだった。彼が再選を目指す1972年の大統領選挙中、野党民主党の本部に盗聴器をしかけようとした5人の男が逮捕された。(民主党本部がウォーターゲート・ビルにあったことから、「ウォーターゲート事件」と呼ばれた)。

 そして、「盗聴器を仕掛けようとしたグループ」は、「ニクソン大統領再選委員会」の関係者であることがわかった。ニクソン大統領とホワイトハウスは、当初関与を否定したが、後に、実際は深く関わっていたことが明らかになってしまう。

 ニクソンは、事件を調査するために司法長官が指名した特別検察官を解任するなど、「捜査妨害」と見られる言動を繰り返した。
 
 具体的には、ニクソンはリチャードソン司法長官(当時)に、コックス特別検察官を解任するよう要求した。しかしリチャードソンは、これを拒否し、司法長官を辞任してしまう。するとニクソンは、ラッケルズハウス副長官に、「コックス解任」を命令。なんとラッケルズハウスも、これを拒否し、辞任した。結局、当時司法省ナンバー3の地位にあったロバート・ボークが、ニクソンの命令に従い、コックス氏を解任した。

 これでニクソン自身が、辞任に追いこまれることになったのだ。

 自身を捜査しようとしたFBI長官を解任したというトランプの行動は、どうしたってウォーターゲート事件を想起させる。真相はどうあれ、「ロシアゲートの捜査を妨害するためにコミー氏を解任した」と、ほとんどの人が思うだろう。トランプは、ニクソンと同じ失敗をしたのだ。

 そして、コミー氏が去ったからといって、FBIが捜査を止める保証はない。むしろ、野党民主党、共和党の反ロシア派はもちろん、トランプから「フェイクニュース」とバカにされているマスコミ(主にCNN、ABC、ニューヨーク・タイムズなど)、CIAなど諜報機関、ナショナリスト・トランプを嫌う国際金融資本などが、「もっと強力に捜査を進めるよう」FBIに圧力をかけるだろう。そして、何よりも、米国民が「トランプとロシアの真実」を知りたがる。

 5月11日、FBIのアンドリュー・マケイブ長官代行は、上院情報委員会で証言。マケイブ氏は、「ロシア疑惑の捜査は、極めて重要なので、今後も継続する」と約束した。また彼は、「職員の大多数は、コミー長官との間に深くポジティブな関係を築いていた」と語り、「コミー氏のせいで、FBIが大混乱に陥っていた」というトランプの説を一蹴した。

 トランプ自身が「火に油を注いだ」結果、「ロシアゲート」疑惑は、まだまだ続いていきそうだ。トランプには、ニクソンと同じ運命が待ち受けているのだろうか?一つ言えるのは、それを望む敵は多いということだ。

(国際関係アナリスト 北野幸伯)