6月20日に発表された貿易統計によると、5月の貿易収支は、8537億円の赤字となった。4月の赤字(4648億円)より大幅に拡大したことになる。1979年以降では、リーマン・ショック後の2009年1月(9679億円)に次ぎ、過去2番目の大きさの赤字だ。

 輸出額は、前年同月比10.3%減の4兆7608億円で、3ヵ月連続で前年同月を下回った。自動車の輸出額が同38.9%減と、4月の67.0%減に続いて大幅に減少し、自動車部品も落ち込んだ。IC(集積回路)やDRAMなどの電子部品の輸出も低迷した。

 輸入額は、原油の価格上昇に加え、原発停止で火力発電に必要な原油や液化天然ガス(LNG)の輸入量が増えたため、同12.3%増の5兆6145億円となり、17ヵ月連続で増加した。増加幅は4月(同8.9%増)より拡大した。金額ベースでは原油が同30.7%増、LNGが同33.0%増だった。数量ベースでも、それぞれ同6.9%増、同26.0%増だった。

 地域別に見ると、アジアへの輸出が2兆7587億円で同8.7%減と、3ヵ月連続の減少。電子部品、自動車部品、自動車の減少が大きい。うち中国向け輸出は9382億円で同8.1%減。

 アジアからの輸入は2兆4500億円で同8.7%増で、17ヵ月連続の増加。原粗油、石油製品、非鉄金属の増加が大きい。中国からの輸入は1兆1529億円で、同6.6%増だった。

 アメリカへの輸出は6453億円で同14.6%減と3ヵ月連続の減少。自動車関連の減少が大きい。輸入は5415億円で同4.2%増と2ヵ月連続の増加だった。

 サプライチェーンの復旧による生産回復が見込まれるため、7-9月期には輸出は前期比で増加に転じると考えられる。ただし、輸入は資源価格の高止まりに加えて復興需要による効果が出てくることから、今後も増加が続くだろう。

 なお、「貿易赤字は、4-6月期のGDP(国内総生産)に大幅な下方圧力になった」と言われることが多い。しかし、貿易赤字とGDP減少との因果関係について、注意する必要がある。

 輸出は、海外の需要減で減少したのではなく、震災による国内の生産設備の損壊という供給サイドの要因で減少したのだ。また、輸入の増加は、発電の火力シフトによる部分が大きい。こうした国内要因の結果が貿易収支に現われているのである。

 だから、「貿易収支が赤字になったために国内の生産が減少する」という通常の場合とは、因果関係が逆になっていることに注意が必要だ。