古い温泉街にも
本に囲まれた宿泊施設が

 都市生活者が必要とする自宅や職場に次ぐ第三の居場所、すなわちサードプレイスとして評価されているということだ。これまでになかったお泊まり女子会の場と見ることもできるし、デイタイムのブックカフェとしての利用シーンまでも含めれば、本の宣伝の場としての価値も出てくる。

「BOOK AND BED TOKYO」の3店舗はいずれも大都市型の宿泊施設だが、古い温泉街の一角にひっそりとたたずむブックホステルもある。佐賀県の古湯温泉にある「泊まれる図書館『暁』」がそれだ。

佐賀県の古湯温泉にある「泊まれる図書館『暁』」。築110年の古民家を利用した宿だ

 建物は元美容院の古民家をリノベーションしたもので、明治末の建築様式も雰囲気作りに一役買っている。

 これは築110年の古民家を利用した宿で、縁側から陽射しが注ぐ、床の間や丸窓つきの書院造りの座敷に選りすぐりの書籍を重ね並べて、1日1組限定で、そこでの夜を過ごしてもらうというもの。ちいさな平屋の古民家とあって、宿泊のみの提供となり、風呂は歩いてすぐの立ち寄り湯(入浴券サービス)、夕食は事前予約か温泉街のスーパーなどで買っての持ち込みとなる(朝食は近隣のカフェの朝食券を進呈)が、そんな一見不利な条件下でも着実に客数を伸ばしている。

 宿泊料は、1名宿泊なら1万5000円だが、人数が増えるほど単価は安くなり、2名なら1人当たり9000円、4名なら1人当たり7000円といった具合だ(いずれも休前日には1人当たりプラス1000円)。また、デイタイムのカフェにも力を入れていて、冷めてもおいしい珈琲豆を福岡の専門店から仕入れて、本を片手にじっくり楽しみたいという、本好きならではの飲み方に心配りしている。

 この「暁」は、福岡市街でデザイン会社「カラクリワークス」の取締役を務める傍ら、本好きが昂じて「ひとつ星」という古本屋を14年に店開きした白石隆義氏が、読書好きにとってのさらなる別天地を作りたいという構想を発表し、クラウドファンディングで目標額を上回る186万円を集めたことで実現したもの。16年10月から営業している。

「都市型のホステルとは違って宿泊客を大勢集めて単価を下げることができず、また、間取りとの兼ね合いもあって、ゆったり過ごしていただくために『1組限定』は絶対に守りたい条件だったので、開業前には、お金に余裕のある50~60代の利用客が多くなるのではと予想していたのです。ところが、実際には20~30代が中心で、男女比では4:6ほどで女性が多くなっています」(白石氏)