中国のストレス社会化が深刻、20代で中年並み重圧の危機

「三十にして立つ、四十にして迷わず、五十にして天命を知る」

 これは孔子が『論語』の中で述べた言葉だ。人は30歳になって学問の基礎ができて自立し、40歳になったらもう迷うことはなく、50歳になったら天から与えられた使命を知るという意味だが、現在の中国は必ずしもそうでなく、「四十にしてもまだ迷っている」という人もいるようだ。

 4月5日付けのコラム(痛勤、残業、過労死…日本と変わらない中国最新労働事情)で紹介したように、中国はかつてと違い、かなりのストレス社会になっている。特に、社会の中堅層である30代後半から40代の人のストレスは大きい。「中年の危機」に陥ると、心のバランスが崩れてイライラ感が増し、それがうつ病など心の病を発症する恐れがある。事実、中国のうつ病患者は増えており、2007年で患者数は3000万人、今では9000万人はいるといわれている。また、現実逃避しようとして不倫に走るというケースもあるという。

 なぜ、「中年の危機」に陥るのか。それは三つの原因が考えられる。一つ目の原因は、「仕事」に関するものである。

 というのも、中年に達すると、二つの「天井」が待ち構えている。まずは「能力の天井」だ。中年になると、若い頃と違って記憶力などが衰え、自分の能力の限界が見えてきて、伸び代がないと実感するようになる。最近の中国は「イノベーション」が重要国策となっているため技術革新の変化が激しく、自分の知識やスキルを絶え間なく向上させる必要に迫られているからだ。

 そして「出世の天井」だ。入社以来懸命に働いて中間管理職にまで昇進したものの、それから先は上がつかえていることもあって、容易ではないということである。

 こうした天井にぶち当たった筆者の周りにいる中国人の友人たちは、これ以上の出世は望めないとして別の会社に移籍したり、ストレスで体を壊したりする人もいるのが現状だ。