南部靖之
Photo by Kazutoshi.Sumitomo

──製造業に対する登録型派遣の禁止など労働者派遣法改正の動きが注目されている。

 今回の法改正には2つの問題点があると思う。

 1つは社会の動向が法案に反映されていないということだ。政治家には派遣で働く人たちの現状が見えていない。男社会、強者の論理で考えられた法案といってもいいだろう。

 30年も前の男尊女卑、男女格差の概念が法改正の底流にあるようだが、働きたい女性、特に家庭に入った女性は、介護や子育てをしながら働けるときだけ働いて収入を得たいと思っている。地方都市の中には、女性が外に出て働くことが最近になってようやく定着し始めたところもある。登録型派遣の禁止は、正社員として働くなんてとても無理な人たちを切り捨ててしまっている。

 もう一つの問題は、日本の製造業が長年積み重ねてきた雇用のあり方、下請けや請負を否定してしまっていることだ。