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1億円以上を稼ぐ新人作家も相次ぎ誕生!
侮れないアメリカの電子“自費”出版ブーム

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第150回】 2011年6月24日
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 「自費出版」――。この言葉には、これまでどこか物悲しいニュアンスがつきまとっていた。作家になりたい、あるいは自叙伝を世に出したい。だが、話に乗ってくれる出版社がないので、やむなく自腹を切って本を出すという行為だ。しかも、周りの知り合いが何部か買ってくれることはあっても、書店の本棚には並ばないし、まさか新聞の書評に取り上げられることなど絶対にない。本は出したものの、ほとんど誰の目にも触れず、いずれひっそりと姿を消す。

 ところが、アメリカでは今、この自費出版に対する人々の認識がすっかり変わろうとしている。

 たとえば、アマンダ・ホッキングという女性作家を例に挙げよう。

 ホッキングは、ちょっと小太りの26歳。小さい頃から小説を書くのが趣味で、17歳の頃から自分の作品を出版社に売ろうと何度もトライしてきた。ある作品のために50以上の出版エージェントにコンタクトを取ったこともある。だが、結果は完敗。型通りでも返事が来ればいいが、うんともすんとも言ってこないところもある。

 そんなやりとりにうんざりしたホッキングは、昨年春にアマゾンの電子書籍用自費出版プラットフォームであるキンドルDTP(ダイレクト・パブリッシング・プラットフォーム)に自分の作品をアップロードした。キンドルだけでなく、他の電子書籍リーダーにも対応する別の自費出版プラットフォームのいくつかにも同じようにアップロードした。

 そして約1年後。ホッキングが自費出版した本は10冊。ほとんどがヤング・アダルト向けのフィクションだ。現在、何と毎日合計9000部を売り上げているのである。彼女の懐には、200万ドル(約1億6000万円)を下らない大金が入ったとも言われている。また先だっては、大手出版社とプリント版書籍の出版契約を結び、その契約額も数100万ドルとうわさされる。

 デビューからわずか1年後に、若くして、作家としての地位も膨大な収入も手に入れた。すべては自費出版のおかげなのだ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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