三菱自にV字回復の兆し、日産統治の「効果と限界」写真:UPI/アフロ

 カルロス・ゴーン三菱自動車工業(以下、三菱自)会長は5月19日、三菱自の研究開発の総本山である岡崎技術センター(愛知県・岡崎市)を初視察し、ゴーン流改革へ自ら乗り出すことを示した。

 昨年10月の日産による三菱自への2370億円出資で両社の資本提携がスタートした。三菱自にとって資本提携先は、米クライスラー、独ダイムラーに次いで今回が3社目である。今回、三菱自の燃費不正問題が契機となって日産に助力を仰いでの資本提携により、三菱自はルノー・日産連合の一員となった。

 ルノー日産連合を率いるカルロス・ゴーン氏にとって手負いの三菱自だが、アジア・アセアン地域での販売力やアウトランダーPHEVに代表される多目的スポーツ車(SUV)の電動車開発力を連合に組み入れることで、世界1000万台連合へ飛躍する野望が込められていた。

 そして当の三菱自は、日産が発行済株式の34%を取得、筆頭株主となったことで日産主導の社内改革が行われている。先陣として昨年6月に日産から送り込まれた山下光彦副社長が改革の中核を担えば、11月にCOO(最高執行責任者)に就任したトレバー・マン氏はゴーンチルドレンそのもの。12月の臨時株主総会でカルロス・ゴーン会長、益子修社長(三菱商事出身)、白地浩三副社長(三菱商事出身)、池谷光司副社長(三菱東京UFJ銀行出身)、山下光彦副社長(日産出身)の経営陣がスタートした。

日産主導の中で
ゴーン氏の手腕に注目!

 日産傘下入りで三菱自の新経営陣の顔ぶれは、三菱自プロパーの存在が薄くなってしまった。さらに、今年4月以降の幹部人事異動でも日産からの人材登用が目立つ。組織改革も「階層のフラット化」と「三権分立体制による責任の分散と明確化」がポイントだが、トップ階層が日産と三菱グループ出身で占められている以上、三菱自のプロパー社員のモチベーションが下がってしまうのではないかと危惧する。