そのOBは、今のような長い銀行名よりも「三菱銀行」という短く分かりやすい銀行名の方が消費者にとって望ましい、と持論を展開。そして、銀行の監督官庁である金融庁がこの問題を取り上げ、三菱東京UFJと議論してはどうかと、暗にけしかけたのだ。

 ところが、“金融庁の威を借る三菱”という見え透いた魂胆は、逆にその金融庁幹部の怒りを買ったとみられる。「そんなことはわれわれが言う話ではない」と、一蹴されたもようだ。

 ただ、銀行を離れた有力OBが“暗躍”を見せるほど、旧三菱銀行陣営にとって「三菱銀行」という銀行名への“先祖返り”は宿願。そのため、「三菱UFJ銀行」への名称変更は、次に「UFJ」の文字も取り去るための長期的な布石という見方もできなくはない。

 そこで、三菱UFJFGの中で旧行意識への決別が進んでいるかどうかの試金石になるのが、今後の幹部人事だろう。

 これまでの三菱UFJFGの人事は、旧行ごとに一定の“自治権”を認めることで、旧三菱銀行が巧みに統治してきた。銀行の頭取は必ず旧三菱銀行。副頭取ポストでは、国際部門担当を旧東京銀行、中部地方駐在担当を旧東海銀行、法人部門担当を旧三和銀行にあてがう。持ち株会社の会長は旧三和銀行といった具合だ。

 こうした割り振りはそれぞれの得意分野に合わせたという面もあるものの、旧行意識の象徴に他ならない。また、旧行ごとの“お約束”人事に対しては、三菱UFJFGの社外取締役や金融庁の中でも問題意識が高まっている。

 くしくも、今年は他のメガバンクグループである三井住友FGとみずほFGの持ち株会社や中核子銀行のトップ人事で、これまでの“お約束”を取っ払うサプライズ人事が相次いだ。

 人事で「鉄のおきて」を貫いてきた三菱UFJFGでも変化の兆しが見えたとき、初めて旧行の呪縛から解放されたといえるだろう。