日本郵政の例では、買収を「急ぎすぎて高値になった」(日本郵便・横山邦男社長)と言うように、6200億円で買収したオーストラリアの子会社はそもそも価格が高すぎたようだ。しかしその段階では高すぎた買収も費用化はできない。

 しかるに、その後のオーストラリア経済の低迷に伴い、子会社は業績を落としてしまった。その段階で、今度は「実際には2200億円の価値しかない子会社になりました」と再評価しなければならなくなった。そうなって初めて4000億円を「のれん代の減損」として発表することになる。これが国際的な会計基準なのである。

M&Aに熱心で国際会計基準、
あの大手企業も抱える爆弾

 さて、ここまでの解説でおわかりの通り、数千億円規模のM&Aを行い成長を目指す大企業で、かつ米国ないし国際会計基準を採用している場合は、東芝や日本郵政でなくても同様の「のれん代の減損リスク」を抱えていることになる。では、それがどのような会社かというと、実は時価総額上位の会社の多くが当てはまるのだ。

 のれん代が高い上場企業と言えば、NTT、ソフトバンク、日本たばこ産業が1兆円規模ののれん代を持つ御三家で、これはトヨタの次に時価総額が高い企業のリストとほぼ同じである。さらに、のれん代が数千億円規模となると、電通、日立製作所、富士フイルム、武田薬品、キヤノン、楽天など、名だたるグローバル企業がこの条件に当てはまる。

 これらの会社が海外の子会社を適正にマネジメントし、堅調な利益を上げられれば何も問題はないのだが、そもそも日本企業は、海外の経営者をガバナンスすることが苦手である。だからこれらの会社の中から突然、「数千億円の減損が発生しました」と言いだす企業がこれからも出てくる可能性は十分にあるのだ。

 一方で、自社による海外進出が多いトヨタ自動車、ホンダなどの自動車メーカーや巨額買収を嫌う日本の金融機関の場合は、のれん代は比較的小さい。だが、そういったのれん代の減損リスクとは無縁な巨大企業の方が、数は少ないかもしれない。

 なにしろ、買収で海外に成長の源泉を求めなければならないというのが、わが日本企業の共通課題なのだ。とすれば株主は、突然の減益発表をある程度覚悟しながら投資をしなければならないことになる。今は、そんな時代なのかもしれない。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)