一方で、五月病やJanuary bluesのような概念がない国もある。タイに10年暮らしたジャーナリスト・室橋裕和氏はいう。

「タイには五月病的な症状に見舞われる人はあまりいません。タイ人は基本的に楽しさや都合のよさ、快適さを追い求める人々で、新しい環境でもどう楽しむかを考えるからかもしれません。すぐにブア(飽きた、つかれた、たるい)という人はいますが、ストレスはあまり溜め込まない印象。ただ、海外転勤などでタイに暮らし始めた日本人のなかにはストレスに悩まされる人もいて、時々自殺者も出ます」

 それ以外にも、南米・ペルーの場合、「五月病? そんな言葉、初めて聞いたよ。多分ペルーの人たちは(新年度に調子が悪くなっても)病気だと思わないと思う」(30代男性、現地在住のペルー人会社員)、南アフリカ共和国では「長期のクリスマス休暇がありますが、休暇明けに不調になるという一般的な認識はありません。経済が悪いため、多くの人が精いっぱい働かなければならず、落ち込んでいる暇がないからかもしれない」(30代女性、現地在住の南ア人教師)という意見があった。

 こうして海外の“五月病 ”事情を眺めていくと、お国柄が見えて興味深い。その背景を、先出の稲田医師はこう解説する。

「ヒトは社会性の生き物ですから、社会のなかで適応できないと苦しみますよね。そして『適応できない悩み』が『社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に、臨床的に意味のある障害を引き起こしている』場合、それは病気として扱われます。つまり、病気かどうかは、本人が苦しむかどうか。そして、苦しむかどうかは本人の属する社会次第ということなのです」

 そんな社会と折り合いをつけられず、五月病になってしまったらどうすればいいのか。

「ひとつの方法として、自分が今どのくらい疲れているのか、意識してみることは有効だと思います。疲れを意識して、疲れをとることも仕事のうちと考えれば、休みの日はしっかり休息をとり、一定のパフォーマンスを継続できるのではないでしょうか。自分の疲れ具合を客観視するには、他人と話してみるのが良い方法です」(稲田医師)

(取材・文/dot.編集部・小神野真弘)

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