4月14日の1万8335円を底に、日経平均株価は2万円近くまで一気に上昇した。

 原稿執筆時点(5月15日)で日経平均の年初来の上昇率は4%。前回(4月17日号)の本欄では、世界の主要株式市場の中で唯一マイナスだったが、そこからプラス圏内に入っている。

 一方で、ドル円レートは昨年末の116円96銭から直近は113円38銭まで上昇した。3%程度の円高だ。円高にもかかわらず株高という、為替レートと株価の乖離(上図参照)をどう捉えればいいのか。

 筆者は、世界の為替レートが世界の投資家のリスクへの志向をよりよく示していると考えているため、ドル円の動きをより重要視している。

 日本株は海外投資家の動きによって左右されることが多く、海外投資家の日本株に対する見方はドル円による企業業績の変化によるところが大きいとみているからだ。よって、さらなる円安の進行がなければ、日経平均株価の上値の余地は少ないと考えている。

 これには三つの理由がある。第一に、米トランプ政権の政策に対する期待値は低下してきており、減税規模やインフラ投資は当初の期待を下回りそうである。

 トランプ政権は現在35%の法人税率を15%にすること、今後10年間で100兆円程度のインフラ支出を目指すとしている。しかし、UBSでは、財源の問題から法人税は25%程度、インフラ投資は30兆~60兆円程度にとどまるのではないかと考えている。

 米国経済が早期に高い成長軌道に乗るのは難しい。市場はすでに今年あと2回程度のFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げを織り込んでいることから、当面のドル高円安材料が出尽くしたとみる。

 第二に、日本の企業業績。年度後半に円安になったこともあり、2017年3月期は純利益ベースで7%程度の増益と推定している。しかし、18年3月期の企業自身の業績予想は、コストを先に織り込む企業が増えているため、アナリストのコンセンサスを下回る企業が多いとみている。よって、日本の企業業績がさらに拡大して日本株が上昇するというシナリオは描きにくい。

 第三に、株価バリュエーションである。下図のように、4月中旬の株価下落時には14倍程度までTOPIX(東証株価指数)の12カ月先予想PER(株価収益率)は下落したものの、直近で予想PERは再度16倍を超える水準まで上昇している。

 4月中旬の下落局面はトレーディングのチャンスであったが、現在はさらに高値を追い掛けるのではなく、同じような下落局面を待つべきであると考える。

(UBS証券ウェルス・マネジメント本部ジャパンエクイティリサーチヘッド 居林 通)