『ギリシャ人のまっかなホント』(アレキサンドラ・フィアダ)という1999年に出版されたコミカルな本がある。同書は、EU加盟国はいずれギリシャに感化されていい加減になっていくと“予言”していた。「これだけは断言できる。一定数のギリシャ人を巻き込んだシステムは、じきにギリシャ的になる」。この“予言”、部分的には当たっているところがある。

 ギリシャは財政赤字対GDP比3%以下というユーロ加盟の条件をクリアするため、加盟前年の2000年の財政赤字を虚偽報告していたことを、04年秋に明らかにした。01年、02年も虚偽報告だった。「ギリシャ政府には3%規定を守る気はなく、いかにすり抜けるかを考え続けたことは否定できない」(『ユーロ──危機の中の統一通貨』田中素香)。

 虚偽がわかったあとの05年頃に、他のユーロ加盟国がギリシャに厳しい態度を取っていたら、今日のような混乱は回避できただろう。だが、ドイツやフランスは曖昧な対応をしてしまった。彼らも経済が苦しく、3%規定を守れなかったため、ギリシャを糾弾できなかったのだ。