菅政権延命の道具か

 菅直人首相が開催する有識者会議である東日本復興構想会議が「復興への提言~悲惨のなかの希望~」(平成23年6月25日)と題する報告書を公表した。

 この会議について、筆者は、そもそも菅首相の時間稼ぎの道具ではないかという懐疑的な推測を持っていた。民間の企業にあっても、経営者が業務に関して自分で有効なアイデアを提示する力量が無い場合に、会議を設立することを以て経営している体裁を整えることはよくあることだ。こうした場合、真に必要なのは、専門家を集めることよりも、トップを適切な人材に代えることだ。なかなか実現しないが、その方が、圧倒的に効果が上がる。

 もっとも、予断がかくのごときものであっても、会議の成果である「提言」の中身が優れているなら、会議及びその結果には敬意を払うべきだ。

 そんな気持ちで「提言」を読んでみたが、率直に言って具体的な中身が乏しく、この会議そのものが時間の無駄であったこと示す証拠物と呼ぶべき駄文だった。

 好みの問題や、文章を起草した方のプライドもあろう。レトリック過剰とも思える文章の巧拙は論じまい。しかし、あまりにも中身が乏しい。

 たとえば、住民を全て津波から安全な高台に移住させるのではなく、効率良く逃げることを対策とする「減災」のコンセプトを報告書は説くが、この程度のことは長々会議を開かなくとも誰でも思いつく。個々の地域の事情に応じて、高台に居住と活動の領域を集約するか、避難の仕組みを充実させるかを組み合わせたらいい。これをどう実現するか、技術的に新しいアイデアが報告書に書かれている訳ではない。

 地域ごとにどの場所を何に使うかということは、住宅や店舗をどこに置くかに関わる重要事項で、早々に発表しないと関係者に迷惑が掛かる問題だ。震災発生から3ヶ月以上も経ってから、このような一般論が政府に提案されるようなスピード感では、この会議の存在が、被災地復興の邪魔になっていると言いたくなる。