5年ぶりの笑顔と、子どもからの招待状

  それから3週間経ったある日のこと。

  再びその会社を訪問すると……。

  その方が笑顔で駆け寄ってきてくれたのです。

「先生、本当にありがとうございました!だまされたと思ってやってみました。トレーニングして約2週間、お風呂の鏡にちょっとだけ歯が映りました。自分の顔を鏡に映してみようと思ったのも5年ぶりでした。続けてみようって気になっています」

  私は本当に、本当に嬉しくて涙が出そうでした。

  その方からの報告は続きました。

「先生に言われたとおりでした。幸せだから笑うんじゃなくて、幸せになるために笑うんだって。本当でした。つい2、3日前もお風呂でトレーニングして、笑う練習をして、それから自分の部屋に行こうと自宅の廊下を歩いてたんですよ」

「そしたらすれ違った息子が、『お父さん!今、笑ってたでしょ!!お父さんが笑ってる!!みんな来て!お母さん、お父さんが歩きながら笑ってたんだよ!!』って大きな声出して……」

「妻と娘もすっ飛んできて、みんなで笑ったんです。妻は泣きながら笑ってました」

「子どもたちがその時に、私に喜んで初めて手渡してくれたものがあるんです。これ、授業参観の招待状です……」

  その方は、今まで一度もお子さんたちの授業参観に行ったことがなかったそうです。

  お子さんたちも、お父さんを呼んでいいのか分からず、お父さんの方も行きたいって言っていいのか分からず、お互いに気をつかい合いすぎて、本気で向き合えなくなってしまっていたのです。

  その年、初めて有給休暇をとって学校に行ったそうです。

  お父さんが笑顔になったから、家族も素直になり、みんなの絆が深まったのでしょうね。

  それから1年、年間100件以上あったその方宛てのクレームは、1件も会社に届いていないそうですよ。

  やっぱり、幸せだから笑うんじゃない、幸せになるために笑いましょう。

笑顔は心を伝える「手段」でしかない

  顔グセ、見た目、印象、私が日頃皆さんにお伝えしているのは、外見のことばかりです。

  こういうことをしていると、「八方美人だと思われるのはごめんだ」とか「人は中身だ、性格だ。楽しくないのに笑えるはずがないだろう」と、反発する方が出てきます。

  たしかに、人として生きていくために大切なことは人間性、「心のあり方」だと私自身も分かっています。

  だからこそ、その心のあり方を人様に理解していただくための伝え方の1つとして、笑顔(「いい顔グセ」)というものが必要なのだと思うのです。