中国共産党設立90周年にあたる7月1日に、北京上海間の高速鉄道が正式運行を開始する。官製メディアの賞賛の声をよそに、民間の評判は芳しくない。一方、この巨大プロジェクトには、かつてのような日本企業の姿もない。(在北京ジャーナリスト 陳言)

 7月1日から北京上海間の高速鉄道が正式に運行される。2012年の春に運行開始予定だったこの高速鉄道が、急いで7月1日に開通するのは、この日は中国共産党が設立されて90周年に当たるからだ。

 長さが1318キロ、総投資額は2209億元にのぼる。08年4月18日から着工し、高速鉄道にとっては運よくリーマンショックに出合ったおかげで、どんどん建設投資が行われ、開通の日も早くなった。北京、天津、上海など三つの直轄市、さらに河北、山東、安徽、江蘇など四つの省をまたいでいる。これだけの直轄市、省の面積でも中国全体の6.5%、人口の26.7%を占め、100万人都市は11もあり、GDPの43.3%がこれらの地域から作り出されている。

 政府共産党の誕生日に合わせ、全国の官製メディアは中国高速鉄道を最大限の賛辞で讃えているなか、民間はそれほど同調していない。「導入技術は最高時速を300キロに制限しているのに、380キロまで走らせていいのか」、「まったく利益の回収などを考えず、もう一つの三峡ダムではないか」などの声は後を絶えない。

 三峡ダム建設の際、発電大国の日本から思ったほど発電装置を納入できなかった。世界に誇る新幹線技術は、今度の北京上海高速鉄道に使われているが、表にはあまり出ていなかった。環境、省エネさらに新エネ技術を、中国でビジネスの新しい柱にしたい民主党政権は、三峡ダム、高速鉄道についての中国国内での評価を別にして、どこまで本気でやるかを、改めて考えるべきだろう。