もはや、企業が人工知能(AI)とどう向き合うかではなく、どう活用するかを真剣に検討すべき段階に突入した。だが、安易に最高AI責任者を雇うことでその課題は解決できないと筆者はいう。


 現在、まじめなテクノロジー企業はどこも、人工知能(AI)チームを設置している。これらの企業は、状況評価や予測分析、学習型認識システム、対話型インターフェース、それに推薦エンジンといった知能システムに膨大な資金を投入しているのだ。グーグル、フェイスブック、アマゾンなどの企業は単にAIを導入するだけでなく、AIを重要な知的財産の中核に位置づけている。

 市場が成熟するにつれ、AIを自社開発するのではなく、外部から調達し、利用する企業が増えてきた。こうした企業は、知能システムを販売やロジスティクス、製造、それにビジネスインテリジェンスの課題を解決するソリューションと見なしている。AIによって生産性が上がり、従来のプロセスが自動化され、予測分析ができるようになり、巨大なデータセットから意味を引き出せると期待しているのだ。

 AIはこうした企業にとって競争優位を獲得するためのものであって、主要製品の一部ではない。AIへの投資は、現場が抱える実際的な問題の解決に役立つものであり、顧客が手にする製品の一部にはならないのだ。ペプシやウォルマートやマクドナルドは、マーケティングやロジスティクス、そしてハンバーガーを裏返す際に有用だとしてAIに興味を抱くかもしれない。だからといって、AI機能を有した炭酸飲料や雪かきスコップ、ビッグマックが近い将来お目見えするわけではない。

 新しいテクノロジーが登場したときの例に漏れず、最近では「AI戦略」や最高AI責任者の採用についての助言を盛んに耳にする。ビッグデータの台頭によってデータサイエンティストが引っぱりだこになったように、あらゆる組織がAI戦略を推進する経営幹部レベルの責任者を採用すべきだと言うわけだ。

 しかし、私はあえて、それを雇うなと訴えたい。絶対にやめるべきである。