Adam Jourdan

[上海 29日 ロイター] - 上海出身の学生エイプリル・チャンさん(21)は、中国の若者世代における、セックスに対する急速な意識の変化を体現している。かつてタブーだったその話題について、チャンさんは自信を持って話すことができるし、リスクについても良く分かっている。

チャンさんや同世代の若者は、見方は均一には程遠いにしても、保守的な親世代よりもずっとセックスについてオープンな意識を持っている。性感染症対策の必要性についての認識も急速に広まっている。

こうした性意識の高い若者世代の存在は、コンドーム市場に急拡大をもたらすと見られており、中国の国内企業が、豪ゴム製品大手アンセル <ANN.AX>から、世界第2の規模を誇るコンドーム事業を6億ドル(約660億円)で買収する決断の背景となった。

「意識は確実に変わっている。私たちは、すごくオープンになっている」と、チャンさんは言う。友人の間では、英日用品メーカーのレキット・ベンキーザー<RB.L>製「デュレックス」や、日本のトップメーカーのオカモト<5122.T>のコンドームを使う人が多いという。高品質との評判だし、両社ともマーケティングに力を入れているからだ。

「これはとても大事な製品。一度の失敗で、重大な結果になる」と、チャンさんは言う。

中国の大都市では、コンドームは街中で売られている。目抜き通りのコンビニエンスストアではレジ横に置いてある所が多い。デュレックスの様なブランドは、中国のソーシャル・メディアのアカウントに何百万人ものフォロワーがいる。

スーパーの棚には、アンセルのブランドで、中国語の発音が「ジェームス・ボンド」に似ている「ジスボン」や、高級ラインの「スキン」が並ぶ。他に、中国メーカーの「エンドレス」や「プレジャー・モア」などの商品もある。

Daxueコンサルティングによると、中国のネットショッピングサイト「淘宝(タオバオ)」では、デュレックスの売り上げが、他に差をつけてトップで、ジスボン、オカモト、地元ブランドの「第6感(シックスセックス)」や「名流」が続く。

アンセルは25日、中国の人福医薬集団<600079.SS>とCITICキャピタル・チャイナ・パートナーズに対して、コンドーム事業を売却することで合意したと発表。人福医薬集団は、市場戦略についてコメントしなかった。CITICにも現段階でコメントに応じなかった。

コンドームとセックスの話題は、ポップ・カルチャーの中で広まりつつあるが、中国における裸体表現についての厳格な規制のため、コンドームの広告は、他のアジア市場に比べて抑制的で限定的だ。若者は、オンラインのチャットでも話題にするが、隠語を使うことが多い。

ポルノ映像は依然として違法だが、ネットでは、ポルノ映像を探す独特の検索用語があり、若い世代は鑑賞する方法を知っている。内容が充実した非合法サイトの見つけ方を知っている人は、「車を見つける」のを助けてくれる「オールド・ドライバー」と呼ばれている。

政府も、HIVやエイズなどの性感染症についての知識を広めようと、高校に性教育の教科書を導入したり、大学生向けにキャンペーンを行ったりと、対応を取っている。習近平国家主席の彭麗媛夫人も、HIVやエイズ対策の意識を高めようと、積極的な活動を行っている。

<性の意識>

性への保守的な意識は、中国共産党が政権を握った1949年以降に広まったが、社会が豊かになり、海外旅行や外国のポップカルチャーに触れる機会が増えるにつれて、それはゆっくりと変化してきた。

子供を1人産んだカップルが、再び妊娠することを避けるためにより永久的な避妊法を利用していた20年前とは、隔世の感がある。だが今でも、不妊手術やIUD(子宮内避妊器具)が、コンドームより多く利用されている。

「避妊方法も含め、性についての社会的意識はゆっくりと高まっている」と、性教育を専門とする会社「Greenxoxo」を立ち上げたWang Xiaoshuangさんは言う。Wangさんによると、結婚前の性交渉は、今では広く受け入れられるようになった。「20年前は、そういう行為はタブーだった」

Wangさんによると、HIVやエイズ防止の運動の影響で、「セーフ・セックス」への関心は急速に高まっている。だが、コンドームの広告には規制が多く、多くのブランドはオンラインでのマーケティングを主体にしている。

中国でコンドーム利用がさらにオープンになれば、2015年に18億ドルだった市場規模は、2024年までに2倍以上に拡大すると、調査会社トランスパレンシー・マーケット・リサーチ社は予測する。

しかし、中国の「性革命」は、まだ始まったばかりだ。最近では、「女性の美徳」を説く教師が、「女性は短いワンピースを着るべきではない」や、「未来の夫のために自分を守るべきだ」と発言して、ソーシャル・メディアで反発が起きた。

「大人向け商品を買うのが流行っているという人もいるけれど、まだまだ無理解な人も多い」と、上海の成人向け商品の店で働くアンという姓の店員は言った。彼によると、「大人向け商品」の市場は、急拡大ではなく、ゆるやかに成長している。だが若い世代が、状況を変えつつある。「若い人は、新しいものを欲しがる。保守的な感覚にしがみついていない」と語った。

性についての意識は数十年で劇的に変わり、今ではほとんどの人が結婚前の性交渉を支持している。だが、避妊用品の需要を押し上げるの決め手となる性教育にはまだ改善の余地があると、学生のチャンさんは言う。

「両親が以前、避妊や、性感染症について基本的な話はしてくれた。でもその他のことは、全部自分で学ばなければいけなかった」