福島第1原発事故、中部電力・浜岡原発の停止を契機として、我が国の新たなエネルギー政策に関する議論が高まっている。議論はどうしても、反原発、原発維持という2項対立に終始しがちだ。だが、エネルギー問題・環境問題に造詣の深い三菱総研の小宮山宏理事長は、エネルギー政策の1番目に位置するのは、エネルギー効率の向上であると説く。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎) 

原子力の大きさを過大視しても
軽視してもいけない

エネルギー政策の第1の柱は省エネ<br />21世紀の戦いに勝つためには<br />固定価格買い取り制度導入が不可欠<br />――三菱総合研究所理事長 小宮山宏こみやま ひろし/1972年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了後、東京大学工学部長 等を経て、2005年4月に28代総長に就任。2009年3月に総長退任後、同年 4月に三菱総合研究所理事長、東京大学総長顧問に就任。『地球持続の技術』『「課題先進国」日本』『知識の構造化』、近著『日本「再創造」』など著書多数。

 わが国のエネルギー政策で、まず一番にやるべきことは、効率の改善によるエネルギー消費の削減です。2番目が再生可能エネルギーを増やしていくこと。そのために、フィードインタリフ(固定価格買い取り制度)をいれる。3番目が化石資源の効率利用。そして4番目がどう安全に原子力を活用するかです。

 まず原子力については、その大きさを考えてみる必要がある。日本では原子力は1次エネルギーベースで10%、発電電力量ベースでは30%弱を占めている。みなさんは30%という数字をよく耳にするので、とても大きいように思われているかも知れないが、これは電力に占める比重です。だから、エネルギー政策全体の中では、原子力を過大視してはいけない。

 ただ一方で、1次エネルギーの10%が突然すべて止まったら、社会や経済が成り立つ国はないでしょう。その意味では原子力の存在は大きい。現在、54基ある原発のうち19基しか動いていないが、この状態が長く続くと日本はもたない。何がもたないかというと、工業生産が成立しない。