「働き方改革」を「賃金カット」の体のいい口実にさせるな

 安倍内閣は「働き方改革」政策で、長時間労働を厳しく規制する方向を打ち出している。この結果、何が起こったか? 「毎月勤労統計調査」によると、超過労働時間は減った。ただし、これは所定外給与を減らす結果にもなっている。他方で、本当に問題となる「過労死レベル」に近い長時間労働は減っていない。

 労働時間の適正化は、生産性の向上よって実現すべきものである。「所定外労働時間」という表面的な現象だけにこだわって強制的に労働時間を減らせば、その歪みは労働者に及ぶ。

超過労働減ったが、所定外給与も
2016年6月以降、落ち込んでいる

 まず、労働時間や給与の推移を、実際のデータで確認してみよう。

「毎月勤労統計調査」によると、30人以上の事業所の一般労働者の労働時間は、図表1のとおりである。

 所定内労働時間には、2013年以降、あまり大きな変化が見られない。それに対して、所定外労働時間は、14年以降かなり増えたが、長時間労働が社会問題化した16年以降は減少している。

 指数の年平均値で見ると、13年に96.0であったものが15年に100.0となったが、16年には98.2に減少している。

◆図表1: 所定内労働と所定外労働

「働き方改革」を「賃金カット」の体のいい口実にさせるな