「今回、政策金利引き下げ幅と当座預金への付利水準をいくらとすべきかについてはずいぶん議論が行なわれました」。11月5日に行なわれた「きさらぎ会」における講演で白川方明・日銀総裁はそう述べている。

 10月31日の金融政策決定会合で、総裁、山口広秀副総裁、西村清彦副総裁、野田忠男審議委員の4人は0.2%の利下げを主張した。しかし、残りの4人はそれに反対した(3人は0.25%引き下げ、1人は現状維持)。

 賛否同数のときは総裁が決断するという日銀法18条2項が異例にも適用された。山口副総裁は4日前の27日に就任している。もし国会の承認が遅れて同副総裁の就任がずれていたら、0.2%派は3人となり、利下げ幅は0・25%になっていたかもしれない。驚くほど微妙な決着だったといえる。

 白川総裁は、上記の講演で、現在のように世界的な金融市場の混乱の影響でわが国の金融市場でも機能低下が見られる局面では、金利引き下げがかえって資金の流れを悪くする可能性について配慮する必要があると述べている。そういった説明から推測すると、総裁は現時点では今回で利下げを打ち止めにしたいところなのだろう。

 しかし、今回の景気低迷はまだ先が長そうだ。経済情勢次第では追加緩和策を日銀が催促される可能性は否定できない。