フェイスブックもマッキンゼーも導入した

 僕らはGV(グーグル・ベンチャーズ)という企業で、2012年からスタートアップ企業とのべ100回以上スプリントを行っている。これ自体すごい数だが、スプリントのプロセスを独自に導入し、問題解決やリスク軽減、意思決定の改善を図っている人の数は、それよりずっと多い。

 スプリントは教育現場でも利用されている。ニューヨーク市のコロンビア大学ではR・A・ファロークニア教授が、ビジネスとエンジニアリングの学生にスプリントの方法を教えようとしたが、通常の時間割に1週間のスプリントを組み込めないという問題があった。

 そこで教授は夏学期の終わりの授業が入っていないフリーウィークを利用して、5日間連続で授業を行う、実験的な「ブロックウィーク」を企画した。コロンビア大学の教室は座席が講堂形式で固定されていてスプリントに適さないから、改装中の教室を確保して、移動式のホワイトボードを設置した。こうしてスプリントの幕が切って落とされた。

 ワシントン州シアトルでは、高校の数学教師のネイト・チップスとテイラー・ダンの2人が、スプリントを利用して生徒に確率を教えた。生徒は初回の授業でボードゲームの精巧なプロトタイプをつくり、次の授業では同級生がプロトタイプのゲームをプレーする様子を観察して、どのアイデアが成功し、失敗したかをメモした。そして最終課題(ゲームの改良版)を提出するころには、確率法則が現実世界でどのように用いられているかを理解することができた。

 スプリントはありとあらゆるシーンで使われている。著名コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーや広告代理店ワイデン・アンド・ケネディも、スプリントを導入している。

 スプリントのプロセスは、エアビーアンドビーフェイスブックのような大手技術系企業のほか、政府機関や非営利団体でも用いられている。僕らの元にはミュンヘン、ヨハネスブルグ、ワルシャワ、ブダペスト、サンパウロ、モントリオール、アムステルダム、シンガポール、そしてウィスコンシン州からも、スプリントの物語が続々と届いている。

 スプリントは利用範囲がとても広く、チームのあり方を変える力を秘めている。あなたも職場やボランティア組織、学校で、またプライベートの生活を変えるために、スプリントをやる気になってくれたら嬉しい。

 何をすればいいのかわからないときや、最初の一歩を踏み出せずにいるとき、大きな決定を下さなくてはいけないときは、スプリントがお勧めだ。スプリントが最高に役立つのは重要な問題を解決するときだから、ぜひ手ごわい課題を選んでほしい。