セカンドライフ以降の
“住みかえ”も視野に入れる

ファイナンシャル・プランナー 
岡本典子さん
CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士。FPリフレッシュ代表。セカンドライフのライフプランニングや高齢期のすまい(終のすみか・高齢者施設・移住住みかえ)相談を得意とする。高齢者施設の見学・視察も多い。「高齢者施設の種類と選択のポイント」などの講演、「リスタート世代へのアドバイス」などを雑誌に執筆。

 そのプランづくりの核になるのは、「高齢期の住まい」。

「かつて人生60年といわれた時代は、庭付き一戸建てが“住宅スゴロクのあがり”でした。しかし寿命が延びた今、セカンドライフ以降での転居が現実味を帯びてきています」(岡本さん)

 子育てには環境のいい郊外の一戸建ても、会社勤めが終わるとそこが途端に不便な場所になったりする。子どもたちが独立していくと、いくつかの部屋は無用の長物ともなる。
「シニア世代に必要なのは、病院、銀行、スーパーやコンビニなどが近くにある暮らし。毎日の生活に便利なところへの転居も考えられます」(岡本さん)

 この時点で選択肢の一つとなるのが、自立型有料老人ホームや高専賃と呼ばれる高齢者専用マンション。自立型有料老人ホームには、付帯するレストランでの食事やアクティビティーが充実しているところが多く、同世代間での交流も盛ん。立地や外観もひと昔前の“老人ホーム”というイメージを超えた、モダンな施設が数多く登場している。

 こうした施設の多くは、一定の検査基準をクリアしているので、建物の安全を求めるニーズにも合っている。実際に大震災以降、問い合わせや入居が増加しているという。

 看護師の24時間常駐をはじめ、訪問介護サービスや提携する医療機関が充実しているところも多数ある。なかには専用の介護棟や介護居室を準備している施設もある。

 介護付き有料老人ホームの場合は、自立できているうちはこれまでと変わらないアクティブなシニアライフを楽しみ、介護が必要になれば、環境を変えずにそこで引き続きサービスを受けられる。

 介護にかかる費用に関しては、さまざまな要因、条件によって違ってくる。あくまでも試算の一例としてだが、と前置きし、岡本さんはこう語った。

「公的な介護保険を最大限利用すれば、自宅介護がいちばん費用がかからないと思われがちですが、必ずしもそうとは言い切れません。

 たとえば、75歳で介護がもうすぐ必要になりそうな人を例にとってみましょう。介護度が進み、90歳で亡くなるケースを試算してみると、家族に負担をかけないように介護サービスに依存したケースと、それなりの自立型施設に入居し、重介護になったら介護棟に移るケースとでは、じつはあまり変わりませんでした」

複数の施設に見学に行き
居住者の生の声を聞く

 有料老人ホームや高専賃などに入居する場合は、パンフレットや施設側の説明だけで判断するのではなく、実際に数多くの施設に足を運ぶことが大切だと岡本さんは言う。

「施設に見学に行ったら、実際に入居している方の生の声を聞いてみることをお勧めします。サービスに対する受け手の評価がわかるし、そのコミュニティの雰囲気も肌で感じ取れるからです。施設選びで重要なのは、それまでの生活を持続できるような、“身の丈”に合った暮らしを選ぶことです。晩年の住まいが決まれば、心も安定し、体の健康にもつながります。じつはそれがいちばん大切なことかもしれません」(岡本さん)