信越化学の“社運プロジェクト”で東洋エンジがやらかした失態Photo:JIJI

 東洋エンジニアリングが大ピンチに陥っている。当初は2017年3月期に125億円の営業利益を見込んでいたというのに、20億円の営業赤字を計上してしまったのだ。最大の理由は、約14億ドル(約1700億円)で受注した米国のエチレン製造設備プロジェクトにおける工事費用の大幅増加にある。

 このエチレン製造設備とは、日系化学メーカーきっての高収益企業である信越化学工業の米国子会社シンテックが、米ルイジアナ州に建設を決定したものとみられる。インフラ資材や建材の材料として使われる塩化ビニル樹脂(塩ビ)の世界最大メーカーである同社が、塩ビの主原料のエチレンの内製化をついに始めるとして、化学業界では知らぬ者はいない案件だ。

 リスクは高くないはずだった。完成を目指しているのは年産50万トンの設備であり、決して設計や建設が難しい大型設備とはいえない。東洋エンジにとって石油化学プラントは得意分野でもある。

 ならば、なぜ工事は混乱したのか。落とし穴は、冗談のようだが“地面”にあった。地盤調査はしたのだが、調査箇所から数メートル離れただけで地質が変化するという「今まで経験したことのない」(芳澤雅之・東洋エンジニアリング代表取締役)事態に直面した。

 問題が発覚したのは昨春。最有力プロジェクトに緊急アラートが点灯した瞬間だった。