[ロンドン/アムステルダム 1日 ロイター] - 米化学大手PPGインタストリーズ<PPG.N>は1日、オランダの同業アクゾ・ノーベル<AKZO.AS>に対する263億ユーロ(約3.3兆円)の買収提案を取り下げた。

この話は、PPGのマクギャリー最高経営責任者(CEO)が3月2日、アムステルダムでアクゾのビュフナーCEOと昼食をともにした時点まで遡る。ある関係者がロイターに話したところでは、マクギャリー氏はここで、突如ビュフナー氏に買収計画と具体的な価格を提示したという。

あいにくマクギャリー氏の大胆な提案は建設的な議論に発展することなく、アクゾ側は木で鼻をくくった対応に終始した。関係者は「マクギャリー氏が無礼なやり方をしたので、アクゾも攻撃的に反応することを決めた」と説明した。実際、3月9日にアクゾは「社員の利益にならない」として買収提案を拒絶し、特殊化学品事業を売却するという別の戦略を推進する意向を明らかにした。

企業買収は通常、関係会社同士が何週間も秘密に交渉し、そこで価格や具体的な統合の形態などで意見をぶつけ合う。しかし、PPGのバイスプレジデント、ブライアン・アイムス氏はロイターの取材に対して「(細かい条件を詰める前に)買収提示の事実が公になったので、初めから手続きが難しくなった」と電子メールで回答した。

つまりマクギャリー氏は、アクゾに提案するタイミングを間違ってしまったわけだ。

一方、PPGの足かけ3カ月にわたる買収の試みは、アクゾ側に鼻であしらわれたり、関連の訴訟に時間を割かれたりした挙句、腰を入れた交渉をする機会自体がついに訪れなかった。3月20日にはPPGが買収額を上乗せした2回目の提案をしたが、それから48時間で拒絶回答に見舞われた。

先の関係者は「初っ端から欠けていたのは対話だった」と述べた。

アクゾは、PPGの提案がいくつかの利害関係者のために最適でないとみなしていたものの、株主にとっては金銭的魅力があったので、いったん交渉に応じれば断れなくなると考えていた。

<不毛な努力>

PPGの主な交渉相手となったのは、ヘッジファンドでアクゾの大株主のエリオット・アドバイザーズだった。エリオットはアクゾ経営陣にPPGと交渉するよう公然と要求し、失敗に終わったとはいえアクゾのバーグマンス会長の解任を求める訴訟まで起こしている。

マクギャリー氏も、アクゾの株主に公開書簡を送ったり、オランダに足を運んで買収案を熱心に売り込んだが成果はほとんど得られなかった。

5月6日、マクギャリー氏はアクゾ側から直前になってようやくスケジュールが合うと知らされたため今度はロッテルダムに赴き、ビュフナー氏との最後となった会談に臨んだ。バーグマンス会長も同席したとみられている。

しかし1時間半の会談では、マクギャリー氏がバーグマンス氏に統合後の取締役ポストを提示するなどの働き掛けをしたものの、何の進展もなかった。その2日後、アクゾはPPGの3回目の提案を蹴っている。

ロッテルダムにおける会談の詳細は、5月22日の裁判所におけるヒアリングで判明した。

その裁判所で、アクゾの取締役会にはPPGと交渉する義務はないとの判断が示されると、PPGの希望は薄れてしまった。

また、PPGが期限に設定した6月1日までに敵対的買収を仕掛けていたとしても、アクゾには「ポイズンピル(毒薬条項)」として知られる防衛手段が切り札として残っていた。同条項に基づき、バーグマンス氏と他の3人の監査役会メンバーは取締役会に拘束力のある勧告をする権限を有している。

PPGは最後の試みとして、5月29日付でマクギャリー氏がバーグマンス氏に書簡を送り、さらなる提示額引き上げやその他の条件改善を検討するとまで踏み込んだ。それでもアクゾは、書簡は受け取ったが対応する時間がないと突き放し、とうとう期限を迎えて万事休したPPGは買収を断念するしかなくなった。

(Pamela Barbaglia、Toby Sterling記者)