完全移行を最優先とするのであれば、「MFクラウド会計」を使っている税理士に乗り換えるというドラスティックな選択肢もなくはないですが、これまで長年会社の経営を見てくれている信頼できる税理士との関係を断つのは数値化しづらい損失でもあります。

 すでに飲食店を経営しており、顧問税理士がついている場合は、システムの移行に際してこのような税理士側の都合という課題が必ず発生します。もし新規開業で特定の税理士とのしがらみが何もなく、かつクラウド会計を使いたいと思っているのであれば、顧問税理士選びの際には「クラウド会計に対応可能かどうか」ということを税理士選びの条件の1つとして加えておくといいでしょう。

“邪魔”だけど“重要”な会計業務

 KAGAYA&Melissaグループでは「MFクラウド会計」を導入したことでの成果(=月次の決算に要する時間の短縮)がしっかりと現れる一方で、今後取り組むべき課題(=会議での会計データの有効活用、顧問税理士とのデータ共有の方法)が明確にされています。やるべきことが明らかにされて、前田さんには「変えていきたい」という強い意思があります。この2つが揃っていれば、会計業務の改革は今後も順調に進んでいくはずです。

 前田さんは飲食店における会計業務を、「あえて極端な言い方をすれば」と前置きをしたうえで、「邪魔な作業」と表現してくれました。

飲食店の月次決算の時間を<br />「1ヵ月」から「5日」に短縮したしくみ

前田 「料理やおもてなしは飲食店の本分であり、重要な仕事です。しかし、バックオフィスの業務、特に会計処理は邪魔なだけで、できればないに越したことはないとみんな思っているのではないでしょうか」

 私自身、飲食店経営の経験があるので、前田さんの言葉に共感をしますし、たいていの飲食店経営者の方も同意見なのではないでしょうか。
 
 会計業務は邪魔なもの。しかし、店舗を運営していくためには欠かせない作業であり、見えなかった数字が見えるようになることで飲食店の本分たる料理やサービスの質を向上させる高度な経営判断を下すことができます。その意味ではやはり極めて重要度の高い業務なのです。

 会計は、レジや顧客・予約管理などのシステムと異なり、完全にバックオフィスの業務で、店頭にはほとんど出てきません。そのため、ほかの会社や店舗がどのようにしいるのか、なかなかわからないものです。しかし、だからこそ、クラウド会計を徹底的に活用して効率化と高度化を推し進めることで、他店への“目には見えない優位性”を生むこともできるのです。
前篇はこちら)