フェイスブックの利用と幸福度の関係を、新たなアプローチで分析した研究結果が発表された。オンラインのみでの交流は、生身の人間関係の代替にはけっしてならないという。


 2016年にフェイスブックが提供したデータによれば、一般的なユーザーは毎日約1時間を同サイトに費やしている。また、デロイトの調査によると、大勢のスマートフォンのユーザーが朝一番で(しばしばベッドから起き上がる前に)ソーシャルメディアのアプリをチェックしているという。

 もちろん社会的交流は、人間が存在するうえで必須かつ健全な要素である。ほとんどの人間は堅固で良好な対人関係を築くことで人生が豊かになると、数多くの研究が結論づけている。

 ただし、社会的交流に関する多くの研究は、「現実世界」を対象に実施されてきたという問題がある。つまり、直接的なつながりであり、これはますます一般的になりつつあるオンライン上の関係とは異なる。昔ながらの交流が健全なのはわかっているが、では、完全に電子機器の画面のみを介して行われる交流についてはどうなのだろう。朝、起きぬけに小さな青いアイコンをタップすることは、人々にどんな影響を及ぼすのだろうか。

 先行研究では、ソーシャルメディアの利用によって次のような影響が生じる可能性が示されている。生身の人間関係から関心が逸れて希薄になり、有意義な活動に費やす時間が減少する。画面を見て過ごす時間が増えるため、座ってばかりになる。インターネット中毒のもとになる。他人と自分を比べて卑下するため自尊心が傷つく

 自他の比較は、人間の行動に大きな影響を及ぼす要因だ。そして人々は、ソーシャルメディアには実生活の最も好ましい部分を披露する傾向がある。ゆえに、他者のそうした投稿に比べて自分の生活は劣っていると考えてしまう人もいるわけだ。

 一方、これに懐疑的な研究者は、ソーシャルメディアが人を不幸にするのではなく、そもそも幸せをあまり感じていない人がソーシャルメディアに没頭するのではないかと考えている。さらに他の研究では、ソーシャルメディアの利用によって社会的支援と生身の人間関係が強化され、幸福度を高めるとしている。

 そこで我々は、ソーシャルメディアの利用と幸福度の相関をもっと明らかにしたいと考えた。我々の研究では、ギャラップが管理する米国内5208人の成人回答者への長期パネル調査から、3期間(2013年、2014年、2015年)のデータを抽出し、加えてフェイスブックの利用に関するいくつかの指標を用いた。その狙いは、フェイスブックを使うことで幸福度が経時的にどう変化したかを調査することである。

 幸福度の指標に用いたのは、生活の満足度、精神の健康、身体の健康(以上は自己申告による)、肥満度指数(BMI)だ。フェイスブックの利用に関する指標には、他者の投稿に「いいね!」をした数、自分自身の近況をアップデートした回数、クリックしたリンクの数などが含まれる。

 我々はまた、回答者の現実の社会的ネットワークに関する指標も用いた。調査期間ごとに、「大事な問題を相談する友人」と「自由な時間を一緒に過ごす友人」を最大4人ずつ挙げてもらった。したがって、合計8人まで異なる面々を挙げることができる。

 このテーマに関する過去のたいていの研究と異なり、我々の方法には3つの長所がある。

 第1に、3期間分のデータがあり、多くの回答は2年間にわたっている。これにより、ソーシャルメディアの利用の変化と幸福度の変化との相関を経時的に追跡できた。ほとんどの先行研究は1つの期間のデータだけを使用しているため、結論の解釈は単純な相関にとどまっている。

 第2に、我々はフェイスブックの利用について、回答者の自己申告ではなく、フェイスブックアカウントから直接収集した客観的な指標を用いている。

 第3に、フェイスブックのデータに加え、回答者の現実の社会的ネットワークに関する情報もある。これにより、2種類のつながり(生身の人間関係とオンライン上の交流)がもたらす影響を直接比べることができた。

 もちろん、我々の研究には限界もある。たとえば、ギャラップの調査サンプル全員からフェイスブックのデータへのアクセス許可を得たわけではないので、どのくらい実情を反映しているかは断定できない。

 調査結果を全体的に見ると、現実の社会的ネットワークは総合的幸福度を高めるが、フェイスブックの利用は総合的幸福度を下げることがわかった。