[東京 9日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は8日、英国のオックスフォード大学で講演し、大規模な量的・質的金融緩和(QQE)を始めとしたこれまでの金融緩和策が効果を発揮しているが、人びとに定着したデフレマインドを転換することは容易ではない、との認識を示した。

日本経済は賃金上昇を伴いながら物価上昇率が高まる好循環が作用していると語った。

就任直後の2013年4月に導入したQQEによって、インフレ期待が「はっきりと上昇」するとともに、大規模な国債買い入れで名目金利が低下したとし、「20年近くに及ぶ日本銀行のゼロ金利制約との闘いの中で、初めて実質金利を自然利子率より有意に低い水準まで引き下げることに成功した」と評価した。

一連の金融緩和策の推進によって需給ギャップが改善、ほぼ完全雇用が実現する中でベースアップ(ベア)も復活し、日本経済は「賃金の上昇を伴いながら物価上昇率が高まっていくという好循環が作用している」と指摘。日本はすでに「物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっている」と語った。

もっとも、足元の消費者物価上昇率がゼロ%程度で推移するなど「物価安定の目標である2%の達成には、なお距離がある」のも事実。QQEによって上昇したインフレ期待は「その後再び低下し、なお弱含みの局面が続いている」とし、「日本銀行は人々の間に定着してしまったデフレマインドを抜本的に転換することを目指しているが、インフレに対する人々の認識を変えることは決して容易ではない」と苦悩をにじませた。

これまでの4年間の日銀による「期待に働きかける金融政策」は「日本経済を正しい方向に導く」としながらも、「残念ながら、われわれの intellectual journey(知的探求)は、まだ完了していない」と指摘。

「低インフレ環境下において、ゼロ金利制約のもとで、インフレ期待をどのように適切に管理していくのか」について分析を深めていく重要性を強調するとともに、中央銀行は「具体的な手法を検討していく必要がある」と語った。

(伊藤純夫)