日本の貿易収支は、東日本大震災後赤字になり、4、5月と2ヵ月間赤字が継続した(赤字額は、4月が4676億円、5月が8558億円)。その後、6月上旬は1654億円の赤字、6月上中旬は1159億円の赤字となった。6月中旬だけで見ると495億円の黒字となっている。このように、貿易収支が黒字化する兆候が見られる。

 輸出入の品目別内訳が公表されていないので、変化の詳細は分からないのだが、原油価格の下落で輸入が減少し、自動車輸出の回復で輸出が増加した可能性がある。

 原油価格動向の変化が貿易収支好転の大きな原因となっているとすれば、黒字が定着したとは言えず、今後の原油価格の推移や発電用燃料の増加いかんによって、再び赤字化する可能性がある。

日本の貿易収支は、
原油輸入と自動車輸出で大きく変化する

 では、今後の日本の貿易収支はどうなるだろうか?

 それを考えるために、これまでの日本の貿易構造を復習しておこう。

 【図表1】に示すように、日本の貿易収支は、経済危機前には、ほぼ年間10兆円を超す黒字を記録していた。それが、経済危機によって08年度には約1兆円程度に減少。その後回復して、09、10年度には各約6.5兆円になっていた。これは、2004年度の半分程度の水準である。

貿易収支に回復の兆し、黒字基調に戻れるのか?

 貿易収支の変化に大きな影響を与えているのは、輸出面では自動車、輸入面では原油などの鉱物性燃料だ。

 まず自動車輸出額の推移を見ると、経済危機前には毎月1兆円を超えていた。それが、08年冬には毎月4000億円程度に落ち込んだ。その後回復して、2011年2月には8000億円程度にまでなった。ところが、東日本大震災のために、4月には2500億円に落ち込んだ。これは、経済危機後よりも低い水準である。その後回復して、5月には4000億円にまで回復した。

 つぎに、鉱物性燃料の輸入状況を見ると、原油輸入は、経済危機前には、毎月1兆円か、それを若干下回る水準であった。つまり、大雑把に言えば、自動車の輸出と原油の輸入がほぼ釣り合う状態だった。09年の初めには、原油価格が下落した影響で、その半分近くになった。その後、アメリカ金融緩和の影響で原油価格が再び上昇し、11年3月から5月にかけては、毎月約9500億円になっていた。

 11年3月は、原油価格がほぼピークに達しており、他方で自動車の輸出が震災の影響で急減した。このため、貿易収支が赤字になったのである。