賃貸で住まいを変えていくよりも
買い替えが可能な家を購入する

 住宅を購入した家族世帯で多くの方が頭を悩ませているのが、家族構成の変化に対し住宅を適切に買い替えられないという問題です。この問題の根底にある原因のひとつに、利便性に関する立地条件を犠牲にしてしまったことが考えられます。

 結婚をして賃貸住宅に新居を構え、子供の出生とともに住宅を購入すべきかどうか悩む人も多いと思います。子供が2人や3人いる場合はなおさら、小学校へ通い始めた頃から子供部屋が必要になるため、広めの住宅を探します。その際に、家族のために利便性を妥協し、住宅を購入するというのがこれまでのパターンでした。

 ただ、子供が独立し、やがて夫婦二人きりとなると広めの間取りが厄介に思えてきます。また、ちょっとした買い物をする際にも歩いてお店まで行くにはしんどく、どうしても車を多用しがちです。車の運転能力も年齢を経るごとに落ちていくので、安全面に不安を感じたりします。そのときに改めて、利便性を犠牲にしたことを後悔するようになります。

 家族の構成が変化するとともに住まいを柔軟に合わせるためには、賃貸住宅の方がよりスムーズです。特に人口減少が進む地域では、利便性が悪いと満足な価格で売れない状況となりますので、利便性を犠牲にして住宅を購入することは相当のリスクを伴います。しかしながら賃貸住宅では、前述した「家賃を払い続けなければならない」という問題がつきまといます。

 それゆえ、子供がいる家族世帯においては、家族構成の変化に合わせて買い替えができることと、老後における住宅費など家計支出の軽減という両面への対処が必要となってきます。

 そこで、住宅ローンの残債と、将来、住宅が売れるであろう価格を意識することが重要です。不動産投資の分野では「出口戦略」ともいいますが、購入する際には、子供が独立した後の住まいのあり方についてもあらかじめ考慮しておくべきなのです。

なぜ賃貸物件には、<br />満足できるファミリー向けが少ないのか?

松本智治(まつもと・ともはる)
不動産鑑定評価システム代表、不動産鑑定士。神奈川県横浜市出身。大学卒業後、不動産鑑定事務所、不動産仲介業、戸建て分譲デベロッパーを経て独立、投資用不動産調査や事業用不動産コンサル業務などを行う。
住宅仲介会社では契約取引業務、戸建て分譲デベロッパーでは用地の仕入れから販売まで1000戸以上に関わる。不動産鑑定評価関連では、外資系金融機関(ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行等)からの不動産デゥーデリジェンス(詳細調査業務)なども含めて幅広く関わり、これまでの不動産価格に関する鑑定及び査定実績は大小含め1000件以上。オフィスや店舗賃料に関する「適正賃料マーケット・レポート」の作成にも携わり800件以上の査定実績を有する。仲介から戸建て建築、宅地造成、ビル建築再開発、賃貸不動産経営、そしてエリア調査まで、不動産に関わる現場を広く経験しているのが強み。
一般の住宅購入検討者に対し、購入すべきか賃貸とするか、購入するときの物件選別ポイントなどの住まい購入に関する相談などを受け、偏らないアドバイスが好評を得ている。