有機EL特集
パナソニックのフラッグシップ有機ELテレビ「TH-65EZ1000」

 高いコントラストを実現した自発光パネル、有機EL。今春は国内メーカーから有機ELテレビが発表し、大きな注目を集めている。そして、先週末にソニーが、今週にはパナソニックが有機ELテレビを発売。すでに発売しているLGエレクトロニクスと東芝を含めると4社の製品が出そろう形となる。

 そこで、各社の有機ELテレビ担当者を直撃取材。それぞれの有機ELテレビの位置づけや戦略、そしてメーカーごとの有機ELテレビの特徴を詳しく紹介していく。

「プラズマテレビの買い換えに有機EL」を狙う!

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今回、話を伺ったパナソニック アプライアンス社 日本地域コンシューマーマーケティング部門 コンシューマーマーケティング ジャパン本部 AVC商品部 テレビ商品課の藤永 勇樹氏

 今回はパナソニック。同社は薄型テレビ「ビエラ」の最上位モデルとして有機ELテレビをラインナップする。

 しかも、フラッグシップモデルとなる「TH-65EZ1000」(予想実売価格は97万円前後)と、「TH-65EZ950」(同86万円前後)、「TH-55EZ950」(同54万円前後)の2シリーズ3モデルを6月16日に発売予定。

ez950
「EZ950」シリーズ

 パナソニックは薄型テレビの国内市場について、2017年から買い換え需要の増加で増えてくると予想している。ちょうど地デジ化による大量需要でのテレビ購入者が買い換え時期に入るためだが、同社が注目するのはかつて販売していたプラズマテレビのユーザーの買い換えだ。

 プラズマテレビは大画面テレビの中では約3割ほどの比率となっており、こうしたユーザーの多くが、同じ自発光の有機ELテレビに注目していると予想。プラズマテレビユーザーからの期待の声も大きいのだろう。そのため、有機ELテレビだけで2シリーズを展開するなど、かなり本気の姿勢をみせている。

 EZ1000とEZ950シリーズの違いとしては、有機ELパネルの搭載はもちろん、高画質エンジン「ヘキサクロマドライブプラス」搭載などは共通。

 外光の反射によるコントラスト感の低減を抑える「ブラックフィルター」の搭載や、デジタル静止画の表示用である「プロフォトモード」の採用はEZ1000のみとなる。

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スピーカー部の側面。正面から見たときに一体感が生まれるように、あえて角度を付けている

 一番の違いは内蔵スピーカーで、EZ950シリーズが一般的なインビジブルタイプのスピーカーとなるのに対し、EZ1000ではスタンド部分に本格的なスピーカーを搭載している。

 また、EZ1000はデザイン面でもよりこだわったものとなっている。有機ELパネルの薄さをアピールするデザインに加え、どこから背面までも美しく仕上げられている。

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本体の裏側もヘアライン仕上げで美しいたたずまいを演出
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パネル上部のフレーム。有機ELなので薄い
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配線もバラけないように背面の足に収納できる

 上部のパネル部分にはアルミ材を加えてヘアライン仕上げの美しい質感で仕上げ、チューナーなどを備える下部は、革製品のようなシボ加工としてインテリア性の高いデザインとなっている。

 もちろん、電源ケーブルや配線のためのケーブルはスタンド部分にまとめられるようになっており、カバーを装着するとすっきりと整頓できる。

プラズマテレビで培った自発光制御技術を駆使して
有機ELのポテンシャルを引き出す

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 ここからはパナソニックの有機ELテレビの画質面の特徴を紹介する。有機ELは自発光ならではの高コントラストが大きな特徴で、プラズマでは難しかった薄さや消費電力といった面でも液晶と同等。ディスプレーとしては優れた性能を持つ。

 これに加えて、同社は同じ自発光パネルであるプラズマテレビの自発光制御技術や、ハリウッドの映画会社と共同で磨き上げた色の忠実再現技術を盛り込み、独自の高画質を追求している。

 まず自発光制御技術だが、自発光型の表示は特有の発光特性があり、入力された信号に対して正確な表示をすることが難しいという。これを入力信号に対して忠実な表示ができるようにするのが、自発光制御技術だ。

 また、RGBの光の三原色でも表示特性には微妙なバラツキがあるため、これをきちんと揃えることも重要だ。

 たとえば、それぞれの色の特性がずれているままだと、黒からグレー、白へと連続的に変化するグラデーションを表示したときに、黒に近いグレーが赤っぽく、あるいは緑っぽく色がついてしまうようなことが発生する。

 これらを正確に表現することが重要であり、自発光パネルを使った経験がないとなかなか対処しにくいところだという。プラズマテレビで自発光制御を行なってきたパナソニックの良さがよく出る部分だ。

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映像設定。キャリブレーションやプロフェッショナルという設定もある
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モードが「ユーザー」なら映像の調整も細かく行なえる

 こうした制御技術が盛り込まれているのが「ヘキサクロマドライブプラス」。これは、パネルの発光制御だけでなく、忠実な色の再現技術についても独自の技術を備えており、有機ELテレビでは、業務用マスターモニターに極めて近い正確な色再現力を実現しているという。

 また、色再現は彩度の正確さだけでなく、輝度の変化についても正確であることが求められるが、そこは「3D-LUT」(ルック・アップ・テーブル)により、低輝度、中~高輝度、高輝度域のそれぞれで色のズレを補正し、特に低輝度領域での豊かな色再現を実現している。

 さらには、色の階調表現についても、16bit映像処理でスムーズな階調表現を追求し、ノイズ感の少ない自然な映像を目指したという。

 そして、最終的に画質を仕上げるチューニングでは、パナソニックだけでなく、ハリウッドのスタジオでの監修を受け、クライアントモニターとして適した実力を持つモデルであるとの認定を得るなど、映画制作の現場でプロが使える性能を備えているという。

 こうした輝度と色の忠実な再現技術が、リアルで臨場感豊かな映像を可能にしているのだ。

オーディオブランド「テクニクス」がチューニングした
本格的なスピーカー

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EZ1000のスピーカーは前面の脚と一体化するように配置されている

 TH-65EZ1000では、臨場感豊かな映像にふさわしい音にもこだわっている。スタンド部に内蔵されたスピーカーは、トゥイーター×1、スピーカー×2、ウーファー×4、パッシブラジエーター×2と9つのユニットを使用し、それが左右のそれぞれに搭載される。

 合計18ユニットのスピーカーだ。駆動するアンプも、高音域20W、中音域20W、低音域40Wの最大出力80Wの大出力となっている。

 スタンドのスピーカー部は保護ネットでカバーされて内部を見ることができないが、薄型の形状ありながらも、多数のユニットを使用することで迫力ある音の再現を可能にしているのだ。

 オーディオ回路の設計も、電解コンデンサーなどにオーディオ専用の高音質部品を採用するなど、テクニクスのチューニングにより音質の改善と豊かな音に仕上げられている。

とても自然な感触になっている映像と音に感動

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いよいよ視聴

 取材ではTH-65EZ1000で、デモ用コンテンツやUHD(4K)ブルーレイを見せていただいたが、そのときの印象を紹介しよう。

 有機ELの大きな特徴である完全な黒はノイズ感のない清潔そのもので、そこに豊かな色が浮かび上がる。

 特に感心したのは、鮮やかな色だけでなく、暗い部分でのくすんだ色がリアルに描かれること。美しいドレスで踊るダンサーを見ていても、肌のきめの細かさや筋肉の質感が生々しいし、ドレスの生地の質感や光をうけてデリケートに色合いを変化させる様子まで、きめ細かく描いている。

 また、高輝度の力強さもしっかりと出ている。比較として同社の液晶テレビとも見比べてみたが、明るい場面の輝度もほとんど差を感じない。これならば、外光が入るような明るいリビングでも力強い映像を楽しめるはず。

 スムーズな階調表現と漆黒の黒から眩しい光の輝きまで丁寧に描かれるため、UHDブルーレイの映画もより生々しい再現となる。映像のリアリティーについては誰もが驚くものになっている。

 そして、その音もかなりの出来映えだ。激しいリズムが刻まれるようなダンス・ミュージックでも、低音がしっかりと出て迫力のあるものになっている。

 感心したのは音像がしっかりと画面の前に定位し、画面から音が出ているような再現になっていること。65V型のサイズにふさわしい豊かな広がりのある音場を含め、細部まで丁寧に仕上げられた音だとわかる。

 映像と音に共通して感じるのは、ギラギラとした派手さや一見目を引くような華やかさではなく、実に自然な感触になっていること。こうした自然なリアリティーは今までにないもの。じっくりと見るほどに良さがわかってくる、味わい深い映像と音だと感じた。

国内生産により製品ごとのバラつきも抑えた
厳重な品質検査を実施

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 最後は、国内の宇都宮にあるパナソニックモノづくり革新センターでの生産についても触れたい。

 この生産工場は、場内を自動運転の運搬車が走り回るなど最新鋭の設備を備える一方で、テレビの組み立てだけでもいくつかの要素に分け、それぞれに十分な技量を持ったスペシャリストが生産を行っている。そのスペシャリストを育成するための教育・研修のための設備も持っているのだ。

 そうした質の高い生産工場で、TH-65EZ1000とEZ950シリーズは生産されている。生産のための工程も有機ELのための一新され、液晶テレビの2倍以上の品質検査、エイジング工程なども盛り込まれ、1台1台が有機ELの優れた実力をきちんと引き出した状態となって送り出されるのだ。

 品質検査では正確な機械による測定だけでなく、職人の目による感能的な性能のチェックも実施するなど、きめ細やかな製品づくりが行われている。

 このような厳しい生産体制のため、製品によるバラつきも極めて小さく、どのモデルも設計通りの優れた性能が保証される。

 価格的には高価な有機ELテレビだけに、こうした生産体制で行われていると知ることはユーザーとしても安心感があるはずだ。

 次回はソニーの有機ELテレビについて紹介していく。