東京で訴えを起こした臨床心理士は、自分は避難していないけれども、ショックを受けているのだから賠償してほしいと訴えています。この行動を「そんなの認められるわけがない」と切り捨てることは、私にはできません。

異常な数値を示し始めた自殺者数

 警察庁が7月6日に発表した「平成23年の月別の自殺者数について」(http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/H23_tsukibetsujisatsusya.pdf)という資料によると、5月の自殺者数は3329人となっています。この数字は、前月比23.6パーセントの増加、前年同月比でも19.7パーセント増えています。これは、2008年1月から同庁が月別自殺者数を発表するようになってから最多の数字だといいます。

 翌6月も2996人という数字が計上され、前年同期比では7.8パーセント増加するとともに、1年のうち最も自殺者が多い3月と並ぶ水準に達しています。

 都道府県別の内訳を見ると、福島県や宮城県といった被災地の数字も増えています。それだけではなく、首都圏や大阪をはじめとする大都市圏だけでなく、西日本や九州でも大きく増加していることが特徴的です。

 増加の要因を東日本大震災だけに関連づけるのは危険ですが、全国各地に震災の間接的な影響が広がっていることも見逃すわけにはいきません。

 以前読んだチェルノブイリ事故に関する論文に、事故のあとその地域で自殺者が増加したという記述がありました。論文では事故処理作業従事者や家を失った避難民が多かったという分析をした上で、地域全体に「絶望的な気持ち」が広がったことも大きな要因だったと指摘しています。