台湾のメイン読者は
優秀な女性たち?

──今回開催したセミナーなどを見ると読者は若い女性が多いようです。台湾の女性読者の印象はいかがですか?

なぜ『嫌われる勇気』は台湾で46万部の大ヒットになったのか?岸見一郎(きしみ・いちろう) 哲学者。1956年京都生まれ、京都在住。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。世界各国でベストセラーとなり、アドラー心理学の新しい古典となった『嫌われる勇気』執筆後は、アドラーが生前そうであったように、世界をより善いところとするため、国内外で多くの“青年”に対して精力的に講演・カウンセリング活動を行う。訳書にアドラーの『人生の意味の心理学』『個人心理学講義』、著書に『アドラー心理学入門』『幸せになる勇気』など。

岸見 講演会やサイン会ではあまり読者と話す時間はなかったのですが、割と控えめな印象です。講演会の感想として「泣きそうになった」と言っている人も多かったのですが、韓国と違ってダイレクトに感情を出すわけではなく、少し押さえている感じがしました。

古賀 台湾には学歴が高く社会で活躍している女性が多いと伺いました。今回我々が取材を受けたメディアの記者などもほとんどが女性でした。彼女たちはコミュニケーションに長けていて、職場でも上手く周囲の人と付き合っていけるのだと思います。ただ、彼女たちと話すなかで気づいたのが「課題の分離」に関する質問が多かったということです。本当に課題を分離していいのか、実践したら社内でこんな不具合が起きるのではないか、と。韓国の場合は「私の母が何々で~」といった非常に個人的な質問が多かったのですが、台湾ではまずはアドラーの理論について、これは本当にやっても大丈夫なのかと訊かれることが目立ったのです。このことは、女性のほうが色々な立ち回りは上手だけれど、実はそれだけに職場等で色々我慢していることの表れかもしれません。実際に、女性が大活躍しているとはいえ、企業のトップは男性が多いようですし。だからこそ彼女たちに『嫌われる勇気』が求められた。その意味でも最高の読者たちだと思います。