欧州のソブリン・リスク再燃に加えて
国債発行に窮する米国への不安も急拡大

 一旦落ち着いたと思われた欧州のソブリン・リスクが、足もとで再燃している。今回重要となるのは、今まで相対的に安心と言われていたイタリアやスペインに、ソブリン・リスクが波及していることだ。

 これらの国は、ギリシャやアイルランドなどに比べて経済規模が大きく、仮に当該国の国債がデフォルト(債務不履行)になると、世界的に金融市場が混乱する可能性は高い。

 一方、国債デフォルトのリスクは欧州諸国だけに留まらない。米国も同様の問題に直面している。米国では国債発行額に上限が設定されている。現在、その上限は約14兆3000億ドルだ。ところが、すでに今年5月、米国の国債発行額はその上限に達してしまった。

 その上限を引き上げるためには議会との合意が必要であり、現在オバマ政権と共和党が協議を重ねている。しかし、共和党の強い対立姿勢もあり、進展が遅れている。仮に8月初旬までに合意が得られないと、米国政府は資金繰りに窮し、今まで誰も想像もし得なかった“米国債のデフォルト”が起きることになる。

 そうした政府部門の借入過多の問題は、金融危機後の景気対策の影響もあり、わが国をはじめ多くの国が直面している。それを解決するためには、基本的には財政支出を削って借入を返すことが必要になる。

 ところが財政支出を減らすと、景気にはマイナスの影響を及ぼす。景気の落ち込みは、国民にとって痛みを伴う。政府とすれば、相反する2つの命題を同時に満足させる解を見つけなければならない。それは、口で言うほど容易なことではない。

 実際には、時間をかけて景気に配慮しながら、支出を減らすことになるのだが、政府が政策運営を誤ると、世界的に経済が大きく落ち込むことが考えられる。そのときのマグニチュードは、かなり大きくなる可能性がある。残念だが、そのリスクは着実に高まっている。