多店舗化によって顕在化する
従業員間のコミュニケーション問題

 といっても飲食店の場合、1店舗しか経営していない段階では、あまりコミュニケーションの問題は顕在化しません。従業員の数が少ないうえに、オーナーも含めて全従業員がほぼ毎日お店で顔を突き合わせることになるので、自然とコミュニケーションが取れるからです。

「これからどんなお店を作っていきたいか?」
「その日の売上や利益はどうだったのか?」
「お客様の反応は?」
「店舗運営に課題はあるのか? あるとしたら、どう改善していけばいいのか?」

 こうしたことは日々営業する中での会話でおのずと共有されて、全員が同じ方向を向いて走っていくことができます。

 問題は、2店舗目、3店舗目と店舗数を増やしていったときです。
 私自身、飲食店経営者時代に経験をしたことですが、自分の店が1店舗だけのときと、2店舗目を出店して以降とでは、オーナー(経営者)と店との関わり方は劇的に変わります。新店を軌道に乗せることに注力しなければならなくなるため、どうしても1店舗目には以前ほどは目が届かなくなってしまうのです。

 1店舗だけのときは繁盛店に育てることができたのに、2店舗目、3店舗目と出店していったら1店舗目の経営がガタガタになってしまい、会社としてもコケてしまうというのは、飲食業界ではよくある話です。

 多店舗展開をしていくにあたって、社内のコミュニケーションレベルをいかに維持するかが、経営者にとって非常に重要な課題になるのです。

 店舗が増えれば、オーナーがひとつひとつの店舗の状態を四六時中こと細かに見ることは現実的に不可能です。何か問題が起こっていても、現場でリアルタイムに把握することはできず、店長からの報告を待たなければなりません。もし報告が遅れれば対応は後手に回ってしまいますし、報告がなければ対応することすらできません。

 また、店舗ごとの裁量でアルバイトを採用し、その後のスタッフ教育が十分に行なわれなかった場合、アルバイトスタッフはオーナーの顔も知らなければ、オーナーがどんな想いを持って飲食店を経営しているのか、つまりその店の理念や目標も知らないままに現場に立つことになります。結果、会社(オーナー)が目指している店づくりと現場の実態にかい離が生まれてしまったり、従業員の中に店舗や会社への愛着が生まれず、定着もしない、などの弊害が起こりえます。

 これから飲食店を開業しようという人で、将来的な多店舗展開をすでにイメージしているのであれば、コミュニケーションの問題は早い段階から取り組んでおいたほうが賢明だと言えます。

 また、単店の場合でも、オーナーはバックオフィスの業務が中心でほとんど店には出ず、現場は店長以下の従業員に任せているという店では、知らず知らずのうちにコミュニケーション不足が起こっている可能性があるので注意が必要です。