実はLED照明の製造は、基幹部品のパッケージさえ調達すれば簡単にできる。新興メーカーの参入が相次ぐのもそのためだ。しかし、そのせいで「チラつく」「耐久性が低い」といった粗悪な製品が増えているのも事実。照明の老舗としてハード・ソフト技術の蓄積があり、ランプからデバイス、器具までの一貫生産体制を持つパナソニックグループにとって、質への期待は追い風といえるだろう。

 非住宅市場では今後、高付加価値商品をベースに、11年度中に100種類の商品を投入する計画だ。そのうえで、オフィスや店舗、街路灯、道路灯などへと展開し、「ビルまるごと」「街まるごと」の提案で旺盛な需要を取り込む。

省エネ意識の高まりで
住宅市場にもチャンス

6月末に開通した北京―上海間を走る1318kmの「京けいこ滬高速鉄道」。その主要駅の一つ、山東省済南市にある済南西駅の駅前商業施設で政府プロジェクトの入札が行われ、パナソニック電工中国が受注。今年9月、LEDダウンライト5000台を納入する。民間向けにも省エネ照明を推進

 LEDランプでも政策が起点となる。政府は11年からの5ヵ年計画のなかでLEDの規格づくりに取り組んでいる。過去にパナソニックは、政府のグリーン照明プロジェクトで、白熱ランプから電球型蛍光灯へ300万本を取り換えた実績がある。LEDについても政府案件に積極的に参加し、規格づくりにも食い込んでいく考えだ。

 住宅向け分野では、白熱灯から蛍光灯への買い替えが主流で、LED照明の立ち上がりは来年以降となりそうだ。しかし、パナソニック電工中国では将来に備えた地ならしを進めている。

「当社の照明器具や配線器具などを扱う販売店を、15年までに現在の倍の5000店に増やし、内陸部へも拡大する」(山本董事長)

 店舗倍増計画を実現するうえでネックとなるのは店舗の内装品質だ。均質な店舗をつくれなければ、ブランドイメージを毀損する恐れもあるからだ。技術力のある施工会社をどう確保するかが戦略を左右するだろう。

 店頭に並ぶ商品には今のところLEDをメインにしたものはない。

 シーリングライト「TwinPa」シリーズは人気商品で、7色の変化が楽しめるLED付きのシーリングライトはさらに人気を博している。

「特に若い人は省エネ製品への関心が高い」。専売店の李劲松(リ・ジンソン)店長が言うように、消費者の嗜好は少しずつ変化しているようだ。

 専売店では照明に限らず、配線器具や換気扇などの製品も販売し、「家まるごと」の提案で、住宅向けニーズに幅広く応えていく戦略だ。すでに大連市で地元不動産会社と連携して進めている省エネ住宅の建設計画も、まるごと提案の一環といえる。

 パナソニックでは1987年に中国で初めて合弁会社を設立して以来、中国事業に力を入れてきた。現在では北京、上海、杭州に照明やLED関連の工場を設立するなどインフラも整備。市場拡大に備え、生産能力も増強する。

 多数のメーカーが群雄割拠する市場で、日本企業がどのように存在感を発揮していくか。中国LED市場の動向から目が離せない。