日銀の債券大量保有と、民間銀行への債券保有規制の矛盾

 日本銀行の量的・質的金融緩和政策によって、金融資産の大量購入が続いている。注目を集めやすい株式・国債のみならず社債もその対象となっており、日銀が大量に購入するため中央銀行が市場を支配し、機能不全になるといった異常事態が続いている。ちなみに日銀は“異次元緩和”以前から、社債を公開市場操作(オペレーション)として買い入れていた。

 現在、日銀は株式についてはETF(株式上場投資信託)の形で購入している。平均値で大量購入するため、良い会社の株が買われる本来の市場メカニズムを停止させるとして内外からの不満も大きい。一方、社債はリアルな現物として持っている。つまり、中央銀行が個別企業の信用(倒産)リスクを負っている、という事態になっているのだ。その社債残高は、約3兆2000億円もある(数字は平成28年3月末、以下同)。

日銀が保有する「東芝社債」というリスク

 そんなリスクのある社債の最たるものが「東芝」である。以前は日本を支える上場企業として、社債買い入れオペ(公開市場操作)の対象となっていた。ECB(欧州中央銀行)と違い、日本銀行は買い入れた社債の銘柄を公表しないので詳細は不明だが、1社当たりの上限は1000億円だ。今回の騒動の前の時点で、東芝は社債を5000億円程度発行していた。

 東京証券取引所は東芝を債務超過と見越して、8月にシャープと同様に二部に格下げする。一部上場のままだと株価指数に東芝が入ることも理由の一つだ。債務超過の場合、2018年3月に上場廃止となるスケジュールも想定されている。上昇廃止になると株主責任を問うために減資が実施されて、日本航空のように株価がゼロになるケースもある。経営不振が極まって会社更生法などで法的整理に追い込まれた場合などである。東芝株は現在でも監理銘柄として注意喚起されているが、上場廃止ならば整理銘柄となる。